ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ゆっくりがいっぱい!』- きのうえで さかさまに ぶらりんこ

ゆっくり のんびり おっとり

くりかえされるこのフレーズが、絵本の通奏低音です。

       ・・・

ナマケモノくんは、

ゆっくり 

  のんびり 

    おっとりと

やってくる、

葉っぱを食べる、

すやすや眠り、

目がさめる。

       ・・・

朝から晩まで、

晩から朝まで、

木のうえで さかさまに ぶらりんこ。

雨の日も、ぶらりんこ。

「なんで そんなに ゆっくりなんだい?」(ホエザル)

「なんで そんなに のんびりなんだい?」(ワニ)

「なんで そんなに おっとりなんだい?」(アリクイ)

「なんで そんなに なまけてるんだい?」(ジャガー)

      ・・・

ナマケモノくんは考えた。

ほくは、

ゆっくり のんびり おっとり

ほんやり のそのそ ぐずぐず

やんわり おちつき

ゆったり うごかず

じっくり おだやか ふんわり ゆらゆら……

だから、ぼくのなかには、〈ゆっくり〉が いっぱい!

      ・・・

でも、なまけてるんじゃないんだよ。

それが ぼくの やりかたさ。 

ゆっくり 

  のんびり 

    おっとりが

       すきなのさ

     

エリック・カールの色彩豊かな絵はやはり魅力的です。また、どの画面にも、ナマケモノくんがいます。ナマケモノくんがあまり動かないように、画家の視点もあまり動きません。安定した構図の絵です。

ホエザル、ワニ、アリクイ、ジャガーなど動くものたちとの対比もあります。活動的な子どもたちは、画面に出てくるどうぶつたちに興味をもつことでしょう。忙しい社会に生きる大人は、ナマケモノに「スローライフ」を学ぶかもしれません。子どもと大人の受け取り方が違う絵本かもしれません。

        ・・・

※『 ゆっくりが いっぱい!』 エリック・カール作・絵、くどう なおこ訳、偕成社 2003年  

     

【 追 記 】

動物学者・ジェーン・グドールさんの「ナマケモノについて」のまえがきがあります。ナマケモノの生態についての説明がとても参考になります。そして「まえがき」の最後に、彼女はナマケモノを「やさしくて平和がすきな生き物」と評価し、私たちがもっと関心を向けることで、「ナマケモノや、かれらがすむ森、その森にすむほかのすばらしい生き物たちが生きのこれるという、大きな希望が生まれる」と語っています。

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