ふるはしかずおの絵本ブログ3

『みんなの こもりうた』- 否定の表現について 

「おやすみなさいの詩」の絵本です。

あざらし 、かもめ 、うさぎ 、りす、ビーバー、うま、はりねずみ、ライオン、ふくろうの子どもが出てきます。寝ている動物の子どもたち。

でも、眠るとき、だれも 子守唄を歌ってもらえませんでした。

 

      ・・・

 あざらしの こが ねています。

 あざらしは はまべで ねむります。

 なみは まわりで おどります。

 けれども だれも あざらしの こに

 こもりうたを うたっては やりません。

     

 

 かもめの こどもが ねています。

 かもめは すなやまで ねむります。

 ちいさい さかなは かもめの ごちそう。

 けれども だれも かもめの こどもに

 こもりうたを うたっては やりません。

    

 

これからは、くりかえしです。

くまの こども

うさぎの こども

りすの こども

ビーバーの こ

うまの こども

はりねずみの こ

らいおんの こ 

だれも 子守唄を歌ってもらえませんでした。        

 

さいごは ふくろうです。

ふくろうは よるじゅう 眠りません。

ふくろうに こもりうた 歌ってやるひとは いるのでしょうか。

 

さいごは、ちいさな赤ちゃんです。

       ・・・

 ちいさい あかちゃんが ねています。

 ふとんの なかに ねています。

 ねんねんよう ねんねんよう

 おかあさんが こもりうたを うたいます。

 おとうさんが こもりうたを うたいます。

    

だれも ~に こもりうたを うたっては やりません」という否定の表現が続きました。 動物の子どもたちは、みんな子守歌を歌ってもらえないことを、読者はどう思うのでしょうか。

 

「どうして」「かわいそう」「うたってあげたらいいのに」「わたしがうたってあげる」というような感想を持つと思います。「うたっては やりません」という否定の表現は、「こもりうた」が、動物たちのみんなにあることを願う、読者のこころをうみだすように思いました。

  

「みんなの こもりうた」というタイトルはふしぎでしたが、読者のこころの中で、すべての動物たちに「こもりうた」が歌われることでしょう。

 

「ちいさい あかちゃんが ねています」のところは、子どもの名前をいれて読んであげてください。もう、そうされていることでしょう。

       ・・・

※『みんなの こもりうた』 トルード・アルベルチ、中谷千代子絵、石井桃子訳、福音館書店  1966年  (2022/8/23)

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