けんかをした、2匹のかえるの 仲直りのはなしです。
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緑のかえると
黄色のかえるが、畑のまんなかで 出会います。
「やあ、きみは黄色だね。きたない色だ。」
「きみはじぶんを美しいと思っているのかね。」
売り言葉に、買い言葉です。
けんかをはじた ふたりの かえる。
そのとき、
寒い風が ふいてきました。
ふたりは、もうすぐ冬のやってくることを 思い出しました。
「春になったら、このけんかの勝負をつける。」
「いまいったことを わすれるな。」
ふたりは、土の中に もぐりこみました。
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春が めぐってきました。
緑のかえるが 目をさましました。
「おいおい、おきたまえ。もう春だぞ。」
「やれやれ、春になったか。」
「去年のけんか、わすれたか」
と 緑のかえるが 言いました。
「待て待て。からだの土を あらいおとしてからにしようぜ」
と 黄色のかえるが 言いました。
池は、ラムネのように すがすがしい水が いっぱいです。
ふたりは とぶん とぶんと 飛びこみました。
きれいになった ふたり。
「やあ、きみの黄色は美しい。」
「きみの緑だって すばらしいよ。」
二ひきのかえるは けんかはよそうと 言いあいました。
よくねむったあとでは、
人間でもかえるでも、
きげんがよくなるものであります。
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緑のかえると黄色のかえるの、けんかの原因は、互いの外見に対する悪口でした。小さなことがけんかの原因ですが、日常によくみられることでしょう。
しかし、冬眠のため、けんかは一時中断です。そして、冬眠から覚めたふたりは、水のなかに入り、からだの土を洗い流しました。きれいになった相手を見て、「やあ、きみの黄色は美しい」、「きみの緑だってすばらしいよ」と認め合うのです。ふたりは、お互いのよいところを見つけだしたのです。
欠点は目につくものです。目に飛び込んできます。しかし、よいところを見つけるには、それ相当の力が必要です。また、そこには相手に対する敬意があります。
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※『にひきの かえる』 新美南吉作、鈴木靖将絵、新樹社 2013年 (2023/3/31)