いもうとを いつもからかう にいさん。
ほんとは、いもうとが 大好きなのに。
兄妹のおはなしです。
・・・
いろいろないたずらをする にいさん。
「おまえの べっどに びょうを いれといたよ」
(でも、これはうそ)
いもうとは、泣きだしました。
それから、
「おまえの キャンデー もらった」
「あれ おまえ めが みっつも あるよ」
「このたまご おまえの あたまに ぶっかけちゃおう」
「おまえの はなばたけの はな みんな つんでやるから」
にいさんは、いもうとを からかいます。
でも、みんな うそ。
どれひとつとして にいさんはしていません。
しかし、いもうとは、そのたびに泣きだします。
・・・
ある日のこと、
いもうとが絵を描いていると、
にいさんは、鍵をかけて、おまえを部屋に閉じ込めるてやると言います。
でも、いもうとは知っています。
にいさんが、鍵をかけなかったことを。
だから、泣きませんでした。
それから、
にいさんが、
人形を捨てると言ったときも、
ガラガラヘビに、噛みつかせると言ったときも、
にいさんの言うことがうそだと知って、泣きませんでした。
・・・
「ねえ、なにしてるさ?」
「にいさん みたい?」
いもうとは、「夜の絵」を にいさんに見せます。
「ぼくも よるの えを かこうかな。」
「くろい クレヨン ぜんぶ つかっちゃったわ。」
ふたりは、空色と黄色で お日様の絵を描きました。
絵を描きつづけると、
空が、薄暗くなりました。
そこで ふたりは レモンパイを たべました。
妹が大好きなにいさん。かわいらしい妹。ほほえましい兄妹の絵本です。
前半は、にいさんの妹へのからかいが中心で、妹は泣いてばかりです。にいさんは、妹にどう接したらよいのかわからないように見えます。
後半になると、妹は、にいさんのいたずらが本気でないことに気がつきます。もう泣きません。そして、一緒に絵を描こうと誘います。妹の方が、なんだか一枚上手のようです。
最後は「ふたりは レモンパイを たべました」でスッキリ終わります。余韻があって、オシャレで素敵です。また、みずいろと黄色が印象的なメアリ・チャルマーズの絵の世界が、兄妹を温かく包みます。
初版は1960年(アメリカ)です。
・・・
※『 にいさんと いもうと 』 シャーロット・ゾロトウ文、メアリ・チャルマーズ絵、矢川澄子訳、岩波書店 1978年 (2019/12/17)