ほとんど文字がありません。絵を読む絵本です。
むかし むかし その むかし。
えっさか ほっさか たひびとさん。( 冒頭 )
・・・
よかったね。( 結末 )
この間に、なにがあったのでしょうか。
いぬが、
たびびとに とびかかろうと しています。( 表紙 )
すると、
たびびとの 着物から、
飛びでたのは、鳥。
それは、きものの柄の 鳥たちです。
・・・
たびびとは、
鳥を おいかけ、
海岸を 走り、
富士山を 越え、
( 異時同図です。下の絵 )
山を 突きやぶって おいかけます。
そして、たびびとは 鳥たちと眠ります。
雨、
雷のときは、
たびびとは フキの葉を 傘にして
追いかけ、
鳥たちは 頭巾を かぶって
逃げていきます・・・
・・・
雪山で 谷間に落ちると、
鳥たちは たびびとを助け、
そしてまた、追跡劇。
そら、ゆくぞ !
そら、にげろ !
でも、
さいごは、
馬に追われ、鳥たちは もとの着物の柄に。
きものの柄から 鳥が飛び出すという破天荒な絵本です。いろいろな試みがみえます。四季が織り込まれています。主人公のユーモラスな表情も見えます。絵でものがたる手法。また、異なる時間をひとつの画面に描く異時同図があります。異時同図は、「信貴山縁起絵巻」や「伴大納言絵巻」などに見られる絵巻物の特徴的な技法のひとつです。『そら、にげろ 』は、大和絵や絵巻物の伝統をふまえ、それらを絵本の表現に活用した赤羽末吉(1910-1990)の意欲的な作品です。
・・・
※『そら、にげろ 』 赤羽 末吉作・絵 偕成社 1978年
【 追 記 】
表紙カバーに作者の言葉がありました。
「文字がないので、小さな読者も「あっ、鳥がにげた」「何羽かな」と、いろいろ発言すると思います。ここでは、小さな読者こそ、立派な「よみて」です。絵を読みながら、おしゃべりしながら、楽しく頁をめくってください。」
・・・
このブログで紹介した赤羽末吉さんの絵本です。
・『 だいくと おにろく 』 松居直再話 福音館書店 1962年
・『 王さまと 九人のきょうだい 』
中国の民話、 君島久子訳 岩波書店 1969年
・『 おおきな おおきな おいも 』 赤羽末吉作・絵 福音館書店 1972年
・『 つる にょうぼう 』 矢川澄子再話 福音館書店 1979年
(2016/8/7)