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その日、
午前の授業で、
火山のことを勉強し、
歌を歌い、鳥の絵をかいた。
ランチタイムのすぐあとに、戦争がやってきた。
・・・
戦争は、
校庭の向こうからやってきた。
先生を吹き飛ばし、わたしの町を瓦礫にした。
わたしの家は黒いあなになってしまった。戦争は、なにもかも 奪ってしまった。
戦争は、だれもかも 連れていってしまった。
わたしは走った。
泥だらけになりすすんだ。
トラックの荷台にのり、ボートにのり、浜辺に着いた。
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しかし、
戦争は わたしを追いかけてきた。
からだに しみこむ。
目の奥に しみこむ。
夢の中まで、追いかけてきた。
学校があった。
生徒たちは、
火山のことを勉強し、
歌を歌い、鳥の絵をかいていた。
教室に入ろうとするとしたとき、先生にこう言われた。
「あなたの場所はありません。いすがないのです」
ひきかえし、小屋で毛布にくるまっていると、子どもの声が聞こえた。
「もってきたよ。これで学校にかよえるから」
それは 椅子。
わたしがすわる 椅子。
火山を勉強し、歌って、鳥の絵を描く、椅子。
「ともだちも いすをもってきたから、ここにいる子は みんな 学校にかよえるよ」
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作者の「あとがき」にこうありました。
「2016年の春には、イギリス政府は3000人の孤児の難民の避難所収容を拒否しました。同じような時期に、座る椅子がないという理由で、難民の女の子が学校への入学を断られました。・・・椅子は、すべてを失い、どこにも行き場のない、そして教育を受ける機会のない子どもたちとの連帯もシンボルになりました」。
「あなたの場所はありません。いすがないのです」 。
この言葉を忘れないようにしたいと思います。
戦争は、わたしたちの心の中にもやってくる。
・・・
※『せんそうがやってきた日』 ニコラ・デイビス作、、レベッカ・コップ絵、長友恵子訳、鈴木出版 2020年 (2022/9/3)