ねことせいくんの会話は、かみ合っているような、いないような・・・おかしな会話です。
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せいくんが さかなを 食べようとしていると、
となりの ねこが 物干しから 狙っています。
ねこが言います。
「さかなは、ねこに食べられた方が しあわせだと おもうな」
「どうして」
「たべられた さかなは、おなかに はいって ねこに なるんだ」
せいくんが 食べると せいくんに なると言います。
でも、なぜ、ねこに 食べられた方が しあわせかと言うと・・・
猫の論理①
ねこになった さかなは、
ひなたぼっこが できるし、
夕焼けを 見ることも できる。
せいくんになった さかなは
勉強しなければならないよ。
だから、ねこに 食べられるほうが しあわせなのさ。
猫の論理②
ねこは たべた さかなのことを 忘れない。
さかなの夢を みる
夢の中で もういちど たべてやんだる
ねこは やさしいからね。
せいくんは さかなのことを すぐわすれるし、夢も見ない。
せいくんの反論
ときどき
夜、思い出して
さかなになって 海をおよぐことも あるよ。
だから、布団が ぬれちゃうんだ。
おねしょをする せいくんです。
人間でも 食べた魚を 思いだすと 知って、
ねこは せいくんに さかなを ゆずることにします・・・
しかし、
ねこは
さかなに 顔をちかづけ 魚のことば(自分の思い)を 伝えます。
「せいくん・・・あたまと しっぽは
ねこに やれって、さかなが 言ってるよ」
「じゃあ そうするよ」
「あたまと しっぽが くるまで ぼくは ねて まっていようっと」
ねこは、また 物干しへ あがっていった。
ねこは、なぜ魚は、ねこに食べられたほうが幸せかを 理路整然と語りました。ねこは、大人のように語ります。ねこの言葉は論理的ですが、最後は本音が出ました。
一方、せいくんは、食べた魚のことを忘れない、と反論します。寝ている時、さかなになって 海をおよぐことも言っています。おねしょの話もします。子どもらしい言い方です。
ふたりの会話は、ユーモアがありますが、またどことなくずれています。
ねこは、すこし太っています。ねこは、せいくんに言ったような論理をかざして、ほかのどうぶつからも、食べ物をせしめてきたのでしょう。
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※『せいくんとねこ』 矢崎節夫作、長新太絵、フレーベル館 2006年 (2023/5/29)