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『おこだでませんように』って何でしょうか。「怒られませんように」だと思いますが、タイトルが仕掛けになっています。
・・・
ぼくは いつも おこられる。
家でも、
妹を泣かせて、かあちゃんにおこられる。
・・・
学校でも、
女の子を驚かせて おこられる。
休み時間、
サッカーの仲間に入れてくれないマーくんとターくん。
ぼくは、マーくんとターくんを泣かせた。
「また やったの!」
ぼくだけ、先生におこられた。
きのうも おこられたし・・・
きょうも おこらてる・・・。
あしたも おこられるやろ・・・。
どないしたら おこられへんのやろ。
ぼくは・・・「わるいこ」なんやろか・・・。
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七夕の日、ぼくは短冊にお願いを書いた。
一番のお願いをした。
平仮名ひとつずつを、こころを込めて書いた。
「おこだでませんように」(「ま」は鏡文字になっています)
先生は、じっと短冊を見た。先生が泣いていた。
「ごめんね。よう かけたね。ほんまに ええ おねがいやねえ」
先生から連絡を受けた、かあちゃんも
「ごめんね」と言って、ぎゅうっと抱きしめてくれた。妹が羨ましがるので、ぼくは妹をだっこしてやった。
「ふたりとも おかあちゃんの たからものやで」
・・・
お母さんに抱き締められているぼくと妹の絵が最後にあります。笑い声が聞こえてきそうな素敵な絵です。3つの短冊が飾られた七夕飾りがあります。「おこられませんように」と書かれた短冊が見えます。「ま」は鏡文字ではなく、正しく書かれています。書き方を教えてもらったのです。正しい書き方を教えたのは、ひとりで2人の子どもを育てているお母さんでしょう。絵の中にも、お話が隠れていました。
大人の心に響く絵本です。
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※『おこだでませんように』くすのき しげのり作、石井聖岳絵、小学館 2008年
【 追 記 】
保育科の教師を始めた頃の思い出です。
幼児教育の現場で長年働いてこられたS先生と廊下で雑談をしていた時のことでした。学生たちがやって来て、自分たちの作品を先生に見せました。その時の先生の言葉がいまでも忘れられません。
先生は笑顔でこうおっしゃいました。
「まあ、すてき」。
学生の作品を認め褒める言葉です。「和顔愛語」のすがたでした。当時のわたしには決して言えない言葉でした。シンプルなのに言えない言葉があるものです。そして、幼児教育とは何かが少しだけわかったように思ったものでした。 (2022/1/14)