小学校5年生のぼく。ぼくは、図工が 大好きです。
そんなぼくが見た「おおにしせんせい」です。
1時間目は「こくご」なのに、
おおにしせんせいは、言った。
「きょうは、1時間目から 6時間目まで、図画工作」
「えー」
ぼくは おもった。
ええ せんせいや。
せんせいは、言った。
ふとい ふとい筆 いっぽんで 描くこと。
ふとい筆で描くと、
腕がうごく、
体がうごく、
こころがうごく!
パレットは 下敷き、
筆あらいは バケツです。
いままでと ぜんぜん ちがう おおにしせんせい。
まっさんと こうちゃんと ぼくは、
学校の廊下を 描くことにした。
「ここやったら ちゃいろで ぬったら すぐ おわる」
あとは 「ちゃんばらごっこ」と まっさんが 言ったから。
あっというまに できあがった。
せんせいは 言った。
「この ろうか その ちゃいろに みえますか・・・
よーく みてね。ろうか さわってみ」
・・・
給食を たべたあと、
ぼくは ろうかを じっと見た。
ぼくは ぼくの ぼくが かんじる
ろうかを かきはじめた。
ろうかが うごきだした。
「よつしゃ!」と おおにしせんせいが 言った。
「さっき きゅうしょく たべたのに もう おなかが すいた」
「こころが うごいて はらが へったんや」
褒めてくれる先生、「ろうか」を描いても叱らない先生、自分しか書けない絵を描くように導く、おおにし先生です。
「えのぐの ちゃいろと ちがいますやろ。いろといろんな いろが かさなって、それが ほんまの、あんたの ろうかや」
机、ろうか、バケツ、給食のコッペパン、絵具、万国旗・・・(懐かしい)。昭和の時代の学校の雰囲気があります。子どもの表情も生き生きしています。「ちゃんばらごっこ」にも時代を感じます。作者の少年時代の思い出が色濃くでています。
・・・
※『おおにしせんせい』 長谷川義史作、講談社 2019年 (2023/4/29)