思春期のぼく。ぼくは、あたらしい「ぼく」を意識しはじめます。
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なんか へんな かんじなんだ
たしかに ぼくは ここにいるんだけど
そのぼくは ぼくじゃないみたいなんだ
ここには かあさんもいる
とうさんもいる いもうともいる
そして ぼくもいるんだけど
そのぼくは ぼくじゃないみたいなんだ
自分の周りのものごとが、違って見えてきます。
好みも遊びも友達関係も。
赤と青の風船がえがかれた壁紙。
いまでは好きではない。
ジャックがやってきて、
「あそぼう」
「いいよ」
「ビーだま」
でも、ぼくは、くびをふった。
「ビーだまは いやだよ」
散歩にでかけるジャックとぼく。
「ひるからも あそぶ?」
「たぶん あそばない」
帰ると、
妹とも遊ばずに、
じぶんの部屋に はいった
ぼくは、箱にはいっていた 貝がらをひとつ 手にもってみた
いままでは、面白いと 思わなかったのに、
いくらみても あきない。
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部屋のおもちゃやガラクタを ダンボールにしまった。
かたずけてしまったら すっきりした
ぼくは いま ここに いる
ぼくは-
あたらしい ぼくなんだ
・・・
思春期のぼくのふしぎな感覚、ゆれうごく心がストレートに描かれています。
ぼくには、もうひとりの「ぼく」がいます。「ぼく」を意識しはじめるぼくには、新しい感情が生まれています。そして、「ぼく」から見ると、好みも遊びも友達関係もすっかり変わってしまいました。
それは、新しい価値を見出し、ものごとを多面的に見るようになったと言えるかもしれません。
昨日とは違った人間になっていると意識し、新しい自分をつくりはじめている彼の成長を見守りたいと思います。
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※『あたらしいぼく』 シャーロット・ゾロトウ文 エリック・ブレグヴァド絵 みらいなな訳 童話屋 1990年 (2022/8/16)