
アンデルセン(1805-1875)の童話「ナイチンゲール」です。
むかし 中国に
皇帝の りっぱな 御殿が ありました
ひろい 庭を いくと、 湖のある 森にでます
森に、1わのナイチンゲールが 住んでいました
ちいさな その鳥の歌に だれもが 聞きほれました
「ナイチンゲールを つれてきて うたわせよ」と、
皇帝は、家来に めいじました
家来たちは、
ナイチンゲールを 見つけだして 御殿に 招きたい、といいました
ナイチンゲールは こたえました
「こうていの おのぞみならば」
御殿の 大広間で
ナイチンゲールは、美しい声で 歌いました
皇帝の 目から、涙が あふれました
褒美に 金を さずけようとすると
ナイチンゲールは、見返りをもとめることなく、こう言いました
「陛下の なみだほど、とうとい ほうびは ごさいません」
ある日
日本の 天皇から、おくりものが とどけられました
ダイヤモンド、ルビー、サファイアが ちりばめられた
ナイチンゲールでした。
ネジを まくと 尾ばねを はねあげ うたいました
「ほんものと いっしょに うたわせてみよう」
ところが、うまくいきません
ほんものの ナイチンゲールは
気のむくままに うたうからです
ナイチンゲールは、森へ かえって しまいました
1年後
つくりものの 鳥は 歯車が からまわりして
うたが とまって しまいました
時計職人が なおしましたが、うたわせるのは、年に1度と きめられました

5年後
皇帝は おもい病気に なりました
そばに 死神が いました。
カーテンの ひだからは、ふしぎな顔が のぞいています。
みにくい顔、優しい顔が 「おぼえていますか」と、ささやきました
皇帝は
不気味な声から のがれようとして さけびました
「かわいい鳥よ、うってくれ! うたってくれ!」
その時
窓の外から、あの ナイチンゲールの 美しい うたが きこえてきました
皇帝の血が いきいきと めぐりはじめました
「ナイチンゲールよ、ずっと、そばに いてくれるかね」
「わたくしは、好きなときに、とんできて 陛下のために うたいましょう。
ひとびとの しあわせと ひとしれぬ 真実について かたりましょう」
こういって、ナイチンゲールは 飛んでいきました
元気になった 皇帝は
みなの前に すがたを あらわし いいました
「やあ、おはよう!」
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ほんもののナイチンゲールと、作り物の鳥が対比されています。みんな、はじめ宝石のきらめく作り物の鳥に夢中になりましたが、歯車がからまわりして、うたわせるのは、年に1度ときめられました。
ほんもののナイチンゲールは、森に住み、気のむくままに、うたう鳥です。歌声に感動した皇帝は、心から涙を流しました。そして、病にたおれた皇帝が、もういちど、「かわいい鳥よ、うってくれ! うたってくれ!」とねがうと、ナイチンゲールは、森から飛んできて、皇帝のいのちを救いました。
元気になった皇帝が「やあ、おはよう」と現れるすがたは、皇帝があたらしい人間になったことを象徴的に表現しているように思います。アンデルセンは、ナイチンゲールの自由な生き方、美の価値とその力について語っています。
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※『ナイチンゲール』 アンデルセン作、カンタン・グレバン絵、松井るり子再話、岩波書店 2019年 (2025/8/27)









