ふるはしかずおの絵本ブログ3

『しばはま』- ひろった財布が人生をかえる

落語の絵本。人情噺です。

 

 

酒ばかり飲んで、

二十日も、魚の行商を 休んでいた 勝五郎

女房に せき立てられ

夜の明ける前に、魚を 買い でかけた

   

   

浜で 一服していると

あれ、なんだ 

水ん中に ゆれている

皮の財布を ひろった

  

 か、金だ

  

    

 「おっかあ あけろ。あけろ

  これ ひろってきたんだ」

     

 「財布じゃないか」

     

全部で五十二両

「ひろったものは おれのもんだよ」と、

勝五郎は 友だちを集めて 大盤振る舞いの どんちゃん騒ぎ

     

       

酔いが さめたとき、 女房が いった

   

おまえさん、なにかい、めでたいことがあったのかい?
「あったじゃねえか」

「なに」

「しばの浜で、革の財布を ひろってきたじゃねえかよ」

「夢をみたんだよ」

「飲んだり食ったりしたのは ほんとで、

 金をひろってきたのは 夢だったというのかい?

 ・・・夢かな」

  

     

それから、勝五郎は 酒を断ち、

商売に はげんだ

客が もどり

商いに はりあいが うまれた

三年たつか、たたないうちに

おもて通りに 魚屋を ひらいた

   

   

大みそかの晩

女房は 竹の筒にはいった お金を もってきた

  

「なんだい?」

おまえさんが しばの浜でひろった お金だよ

     

「あんとき、夢だって いったじゃねえか・・・」

「堪忍しておくれ」

     

    

あの日、大家さんに 相談して

財布のことは 夢にして

役所に とどけたんだよ

引きとり手が いないので、もどってきた、と はなすと・・・

    

 「・・・よく夢にしてくれたたな。ありがとう」

 「堪忍してくれるの?」

 「みずくせえこというなよ」

 

「おまえさん、いっぱい のんでおくれ」   

女房が ついでくれた 

酒を のもうとすると・・・ 

     

「どうしたの?」

    

「・・・おっかあ、やっぱり、おれは よすよ

 また、夢になると いけねえ

   

        ・・・

人情噺の傑作「芝浜」です。

        

勝五郎にうそをついて、財布を拾ったことが夢だったとするくだり、またさいごの場面で、必死にわけを話す女房と勝五郎の掛け合いが、見どころ、聴きどころ、聴かせどころです。女房の話をきいて、勝五郎はいいます。「・・・よく夢にしてくれたな。ありがとう」「・・・」「おめえの いうとおりだ」。夫婦の機微にふれるところです。

      

絵本の文章は、ふたりの会話勝五郎の心内語が中心で、語り手のことばは最小限に抑えられています。落語の小気味よいテンポをいかしています。また、江戸言葉が、絵本でも再現されています。天秤棒でさかなを売る男は、落語では「勝五郎」ですが、絵本のなかでは、女房から「おまえさん」と言われています。紹介文では、「勝五郎」の表記をつかっています。

      ・・・

※『しばはま』 野村たかあき文・絵、柳家小三治監修 教育画劇 2018年  (2025/9/11)

SHARE