古はがきの1枚から、力学の世界を解説してくれる 絵本です。
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古はがきを半分にきって、 橋のような形にして、 そこへ10円玉をのせてみることにします。いくつ、 のるのでしょうか。
実は3枚だけ。
もっと たくさんの 10円玉をのせるには、 どうしたら よいのでしょうか?
折り まげて みましょう。
よわい紙も、 折り まげて、
V 字型
コ の字型
H 字型
にしますと、 たくさんのものを のせることが できます。よわい紙のなかから、 つよいかたちがあらわれました。折り方しだいで、紙の強度がちがってきます。ここに書かれていることは、 子どもといっしょに確かめてみることができます。子どもとできるやさしい実験です。
身近な題材。
実験による検証。
意外な結果。
どれも子どもたちの興味をひきます。
また、語り手は、 聞き手の興味をひくように語っています。ユーモアもあります。かこ・さとしさんの文章の特徴です。
同じ紙でも、 形や置き方によって 強度が違ってくる事実。駅や街や工場で、同じような形が使われていること。 これらの事実は、私たちの知識を広げてくれます。今まで、このようには知らなかったのです。
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「 まったく同じ物質材料が、その置かれた状態、周囲との関係によって、異なった性質、機能に転化する 」 とかこさんは言っています。
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「 条件 」 を変えると 「 機能 」 も変わるのです。
また、こうしたものの見方・考え方は、自然に対する認識の方法であるとともに、子どもの見方にも 通じているように思います。子どもも、周囲の状況や関係が変われば、まったく ちがった人間になることが あるというようにです。この絵本は、力学の知識だけでなく、子どもの見方まで 教えてくれました。
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※ 『 よわいかみ つよいかたち 』 かこさとし・著/絵、 童心社 1988年
【 追 記 】
かがくの本シリーズは10巻ありますが、 どれもすばらしい内容です。
『 ぼくのいまいるところ 』 ( 絵: 大田大輔)
『 かわいいあかちゃん 』 ( 画: 富永秀夫 )
『 たねからめがでて 』 ( 絵: 若山 憲 )
『 あるくやまうごくやま 』 ( 絵: 宮下 森 )
『 あまいみずからいみず 』 ( 絵: 和歌山静子 )
『 ひかりとおとのかけくらべ 』 ( 絵: 田畑精一 )
『 なんだかぼくにはわかったぞ 』 ( 絵: やべ みつのり )
『 よこにきったまるいごちそう 』 ( 絵: 岡本武紫 )
『 ちえのあつまりくふうのちから 』 ( 画: 滝平二郎 )
(2013/8/6)