『 のろまな ローラー 』は、
すでに 絵本の 古典とも、 いってよい 作品です。
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第1部。
ローラーが、 ごろごろ ごろごろと 道を なおしていきます。
そこへ、
大きな トラック、
りっぱな 自動車、
こがたの 自動車が やってきました。
三台の くるまは、 ローラーが 「 のろま 」 であることを、
しかりつけたり、
ばかにしたり、
笑ったりして、
通りすぎます。
第2部。
やまのふもと、
山の 途中、
見晴らし山 ( 場所が違っています ) で、
三台の くるまが、
パンクをして、 困っています。
ローラーは、
「 はやく なおして おいでなさい 」
とやさしく声をかけていきます。
くりかえしの表現は 単調になりがちですので、
場所、
人物の言い方など
変化をつけて 表現されています。
第3部。
感謝の 場面です。
三台のくるまは、
道が
「 たいらになる 」
「 なおる 」
「 りっぱになる 」
と言って、 ローラーに感謝して、 走り去ります。
「みちも このとおり りっぱに なるのですね 」。
道だけでなく、 ローラーも 「 りっぱ 」 であるというように 読めます。
だんだん 深く意味づけられていきます。
そして、
ローラーは、 ゆっくり ゆっくり かえっていくのです。
第1部の なかから、 ローラーの表現だけを 抜きだしてみましょう。
ローラーが、 最初から 仕事を していることが わかります。堅実で まじめな ローラーの人物像は、 最初から 最後まで 変わりません。三台の くるまは、ローラーの役割が わからなかったのです。そして、読者も。見かけで、判断してしまいました。「 ローラーは、走るのが遅い、のろま 」だと。しかし、自分たちがパンクして、言いかえれば、痛い目にあって、ローラーの役割がわかったのです。
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三台のくるまは、ローラーに対する 認識を変えました。読者も、同様にローラーに対する認識を 変革されるのです。「 かんじんなものは、 目にみえない 」と『 星の王子さま 』 のキツネが 言っています。「 ゆっくり、 ゆっくり 」 と走る車もあるのです。そして、子どもも。子どもの見方を おしえてくれます。
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※ 『 のろまな ローラー 』 小出正吾文、 山本忠敬絵、 福音館書店 1967年 (2013/9/15)
【 追 記 】
山本忠敬さんの絵に、途中から犬がでてきます。犬でも追いかけることができるローラーです。また、広葉樹と針葉樹で山の高さがわかります。りっぱになった道路の青、夕焼けの美しさが、ローラーを彩ります。