ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 ちいさな たいこ 』- かぼちゃの中から聞こえる祭り囃子

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「ちいさな たいこ」って、いったい、なんでしょう。
表紙には、大きなかぼちゃが 描かれているのに。
タイトルと絵が 読者への しかけです。
・・・
わずかな 野菜を つくって 暮らしている
おじいさん と おばあさん。
夏、
かぼちゃが おおきく 育ちました。
かぼちゃ畑から、祭り囃子が、聞こえてきます。

おおきな かぼちゃを とって、
枕元に おいてみると、
どんひゃら ぴいぴい」と 聞こえてきます。
光の さしているところを、指で押してみると、
ぽっかりと まるいあなが あきました。
ふたりは、覗いて みました。
・・・
すると、
小さな人たちが、輪になって 踊っています。
その楽しそうなこと。
踊りを見るのが なによりの 楽しみとなった ふたり。
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ところが、
ある日、太鼓が壊れ、お囃子が 聞こえなくなりました。
ふたりは、あたらしい太鼓を 作ってあげます。
竹の どう
どんぐりの 皮 を はり、
渋を塗った 紙 を はった、ちいさな 太鼓。
お箸で つまんで、かぼちゃのなかに。

どんどん ひゃらら
どんひゃら どんどん
 ♪

小さな人たちたちは、お礼に 団子を あげます。
団子を 食べた おじいさん と おばあさん。
ふしぎ、
ふしぎ、
あっというまに 親指ぼどになり、
かぼちゃの中に 入っていきました。
そして、いつまでも、たのしく くらしましたとさ。

心温まるファンタジーです。竹のどう、どんぐりの皮、渋を塗った紙でできた ちいさな太鼓がおもしろい。それをお箸でつまんで かぼちゃの中にいれる場面が、印象的です。「どんどん ひゃらら/どんひゃら どんどん ♪ 」と、お囃子が絵本から響いてきます。初版は1974年の「こどものとも」です。日本画家の秋野不矩(あきの ふく、1908-2001)さんが 絵を描いています。

おじいさん と おばあさんは、小さな人たちを思いやる人物であり、祭囃子をたのしみ、共感する人でした。光のさした ちいさな穴は、異界への通路。かぼちゃのなかの異界にスッと入ることができたのは、こうしたおふたりだったからでしょう。ふたりの人物像は、ファンタジーを成り立たせる条件のひとつです。
・・・
秋野不矩さんは静岡県浜松市のご出身です。浜松市天竜区に秋野不矩の美術館があります。
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※『 ちいさなたいこ 』 松岡享子作  秋野不矩絵  福音館書店 2011年(1974年初版)  (2017/9/7)

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