ライオンのかげ( 影 )の おはなし。
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ライオンのかげが 言います。
もう いやだ。 こんな くらしは。
ライオンがかけると、かげは、いつも石ころにぶつかっています。
とまってくれ
でも、かげの声は 聞こえません。
きょうも、がちーん。
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ある夜、
ライオンが、夜遊びに でかけました。( 下の絵 )
ライオンの足が すーっと かげから はなれます。
かげとライオンは、別々に なりました。
うれしい かげ。
シマウマのかげを 食べる かげ。
あさつゆの かげを なめる かげ。
おしっこをする かげ。
本物のライオンは、しょんぼりと 帰ってきます。
( 影がありませんから。)
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かげは、もう一度、ライオンにつきました。
かげが おならをすると、本物のライオンも ぷっとします。( 笑 )
かげが かけだすと、
ライオンは 後ろへ かけだします。
とめてくれー
こんどは、ライオン。
「さかさまに はしる ライオン・・・これは もうかるぞ」
猟師は、鉄砲のひきがねをひき、
ぷすり。
でも、かげが、ライオンにおおいかぶさって 無事でした。
なかよしになった かげと ライオン。
ふたりで、うしろむき ごっこです。( 笑 )
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「みつけしだい、うちころしてやる」と 息まく猟師は、ふたりを 崖っぷちまで 追いつめました。
そのとき、さーっ。
朝日がのぼり、かげの前足は、向こう岸まで すっとのびました。
いまだ! かげは あと足でけり、ライオンは お尻からジャンプ。
ぴゅーん。
かげがもの化する逆転の発想が、おもしろい絵本です。
そのすがたは、滑稽なものですが、また同時に深刻な事態でもあります。かげは、光とライオンがあって、はじめてできます。かげは「もの」ではなく「こと」(現象)。 また、かげは、わたし(ライオン)のかげです。 自分のなかから 生まれてきたかげが、自分をふりまわす。 支配する? こうしたすがたを見ると、素直に笑えない感じです。かげ(影)とは、いったい何なのでしょうか。 なにを象徴しているのでしょうか。
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※『さかさまライオン』 内田 麟太郎作、長 新太絵、 童心社 1985年 第9回絵本にっぽん賞 受賞作品です。
【 追 記 】
かげ(影)は、とても魅力的なテーマです。シャミッソーの『影をなくした男』(池内紀訳、岩波文庫)を思いだしました。また、新美南吉にも「かげ」という作品があります。満月の夜、じぶんのかげと競争するカラスのおはなしです。南吉の「かげ」はこのブログでも紹介しています。 (2017/3/5)