
アメリカの有名なイラストレーター、ノーマン・ロックウェル(1894-1978 )の絵本です。ウィリーというのは鳥のツグミです。
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ウィリーは、変わりものでした。
でも、
だれともちがう自分自身でありたい、と願っていました。
森で一人で住みはじめた ウィリー。
自分にはいったいどんな才能があるのか、と考えました。
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ウィリーは、
フルートのやさしい調べを聞きます。
図書館につとめるポリーさんのフルートに合わせて、ウィリーは歌いはじめました・・・
そして、かれは、自分の運命をさとりました。
ぼくは、すばらしい偉大な歌手になるんだ!
ポリーさんは、ウィリーとのデュエットを楽しみました。ウィリーの歌を楽譜に書きとめ、作曲するツグミのニュースを伝えました。そして、ふたりはワシントンの国立鳥類学会へ行くことになりました。みんなは言います。
ウィリーは天才だ!
ウィリー自身にも、それがわかりました。
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ウィリーは鳥類園にいくことになりました。でも、ポリーさんは環境がちがうことを心配しました。
はたして、
ウィリーは、
眠ることも、
食べることも、
飛ぶことも、
歌うこともできなくなりました。
自分の才能にほこりをもっていたが、有名人にはなりたくなかったのだ。

ポリーさんは、ウィリーを森へ放してやります。
博物館には「ウィリーの部屋」がつくられ、いまでも、だれでも、彼の音楽に出会うことができます。音楽こそウィリーを特別にしたものでした。
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ノーマン・ロックウェルは、生きいきとした表情・動きの人物を数多く描きました。かれの描く人物とその生活は、ひと昔前のアメリカを伝えています。
自分の才能について考え、歌手となろうとするツグミのウィリー。才能に自信をもっているが「有名人にはなりたくない」と思っているウィリー。有名であるとかないとかは、自分のしたいこととは別のことでした。ツグミのウィリーは、ノーマン・ロックウェル自身かもしれません。自分の考えを託した人物として創造されているように思います。そして、ウィリーを特別にしたものが歌であったように、絵画こそロックウェルを特別にしたものでした。
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※『ウィリーはとくべつ』 ノーマン・ロックウェル作、谷川俊太郎訳、紀伊国屋書店 1995年 (2022/4/24)