
「ないしょのおともだち」って誰のことでしょう。
原題は、MARY and the MOUSE, THE MOUSE and MARY
マリーとねずみが、おともだち ?
でも、どうやって友達になったのでしょう。
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むかし、とても大きな家に、マリーという女の子がすんでいました。
家のすみに、ちいさな家があって、ネズミの女の子がすんでいました。
おとうさん、
おかあさん、
わたし、
いもうと、
おとうと。
家族構成も同じ。
学校へ行くのも同じです。
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ある晩、夕飯の後片付けをして、
マリーは、
フォークを落としました。
ねずみも、夕飯の後片付けをして、
スプーンを落としました。
ふたりは、壁越しにお互いの存在に気がつきます。
その日から、毎晩、ふたりはわざとフォークとスプーンを落とし、お友達になります。
手をふるマリー。
手をふるネズミ。

マリーは大きくなり、家を出ていきます。
ネズミも大きくなり、家を出ていきます。
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マリーはおかあさんになりました。
モダンなおおきな家にすみました。
ネズミもおかあさんになりました。
ちいさな家にすみました。
誰の家に住んだのか、わかりますね?
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ここから後半。
2人の娘たちのはなしが始まります。
マリーのむすめの マリア
ネズミのむすめの ネズネズ
ふたりは学校へ。
同じように行動しています。
ある晩、
マリアは、 本を落とします。
ネズネズも、本を落とします。
お互いに気がつく ふたり。
ふたりは、まい晩、わざと本を落とし、手をふりあいました。
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そして、
マリアは、ネズネズの家をのぞき込み、
ネズネズも、マリアの家をのぞき込み、
ばったり。
ふたりは、おおきなひそひそごえで、言います。
おやすみなさい!
『ないしょのおともだち』というタイトルが読者への仕掛けになっています。読者は、誰のことなのか知りたくなってきます。絵本は表紙から始まります。はじまりの0行です。また、マリーとネズミがすでに表紙に描かれています。 読みかたりのときは、表紙を上手に使いましょう。
マリーが友だちになったのはねずみでした。しかし、「ねずみ」はねずみの姿をした人間の形象です。2世代にわたる友達関係の話でしたが、これって実際にあることでしょうか。きっとあることでしょう。
「関係」がないと思われていたところに新しい「関係」が生まれました。4人の人物たちの間に。人物と読者のなかに。人、もの、こととの新しい関係がうまれるところに、人生を豊かにするものがあるように思います。
バーバラ・マクリントックの絵は、 マリーとネズミ、マリアと ネズネズの時代をしっかりと描き分けています。 ご覧のように優しい雰囲気で繊細な絵です。
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※『ないしょのおともだち』ビバリー・ドノフリオ作、バーバラ・マクリントック絵、福本友美子訳、ほるぷ出版 2009年 (2022/3/17)