世界一胴が長いダックスフント、プレッツェルの恋のはなしです。
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1歳になったとき、
プレッツェルは、ドッグショウで1等賞をとりました。
みんな、プレッツェルを見ると、
ほう!
といいました。
プレッツェルは得意満面です。
でも、グレタだけは、知らん顔。
グレタは、向かいの家のダックスフントです。
プレッツェルは、グレタのことが大好きで、結婚したいと思っていました。
プロポーズ作戦のはじまりです。
はじめは、大きな骨を持っていきました。
きれいな緑のボールもあげました。
でも、だめ。
「おくりものなら だれでも できる!」
「ごらんよ。すごいだろ」
パンのプレッツェルにそっくりになります。
でも、これもだめ。
「パンやさんで売っている、プレッツェルのほうがずっと好き」
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ある日、グレタが
ボールを追いかけて、穴に落ちてしまいました。
ふかい ふかい穴で、グレタは外へ出られません。
プレッツェルが、走ってきました。
「いま すぐ たすけるぞ!」
プレッツェルは、長い胴を使って、グレタを助けます。
「あなたは、わたしの いのちを すくってくれた すてきなかた!」
「ぼくと けっこんして くれるかい?」
「もちろんよ」とグレタが言いました。
「でも、あなたが どうながだから けっこんするんじゃないのよ!」
そして、ふたりは、キスをして結婚しました。
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グレタに求愛するプレッツェルの行動が、いじらしい感じです。読者は恋の成り行きに注目します。
「あなたが どうながだから けっこんするんじゃないのよ!」
見た目じゃない、とグレタは言っています。主人公は、一般的にはプレッツェルということになるでしょう。しかし、このように言うグレタに共感し、グレタが主人公だとする読者もいるのではないかと思います。主人公は客観的には決めらないように思います。主人公は、読者にとって誰なのかということです。
また、表紙と裏表紙にまたがって、プレッツェルが描かれています。ほんとに長い胴体をしたプレッツェルです。『プレッツェル』は1944年の出版です。
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※『どうながのプレッツェル』マーガレット・レイ作、H.A.レイ絵、渡辺茂男訳、福音館書店 1978年 (2022/5/25)