メアリとわたしの「けんか」のおはなしです。ふたりの友達関係を描いています。
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きょうのメアリ、へんよ
いつもとちがうわ。
メアリなんてきらい
だいっきらいよ!
わたしが乗ったら、スクールバスの席をかわるし
えんぴつが折れたら、ピーターから借りるし、
「わけが あるのよ。メアリにきいてごらんなさい」とおかあさん。
わたしにはできないわ。
黒板も ひとりで消すし、
体操では ほかの子と組になるし
そっぽをむいているし、
メアリなんてきらい
だいっきらいよ!
かえりは まっててくれないし
つんつんして いってしまったわ。
わけが あるのよ。
メアリに「どうしたの」ってきいてごらんなさい。
いやよ、ぜったいできない。
でも・・・
もしかして・・・
わけがあるのかも・・・
き・い・て・みようか・な
勇気を出して聞いてみると、メアリは洋服をけなされたと思っていたのでした。
「うそ! ぜったい、いっていない!」
「スーからきいたわ」
「スーとなんか はなしてないもん、わたし」
「スーは ジェーンにきいたって」
「ジェーンに? わたし にあっているといったのよ」
「……そうだったの……わたし、にあってた?」
「あのおようふく、とってもにあってたわ」
メアリはにこっとして
「ね、あしたあそぼう」
「うん、あそぼう」
ほんとうは、仲直りしたいのに「もうメアリとは絶交だもん」というわたし。仲違いの原因を、相手に聞いてみるのは勇気のいることですが、そのようにするわたしに共感します。
「何か訳があるのよ。聞いてごらんなさい」とやさしく諭すおかあさん。大人の読者はおかあさんに共感することでしょう。メアリとわたしの両方のことを考えた対応です。子ども同士が仲違いしたときに、親として、どう接すればいいのかを教えてくれます。
ゾロトウは子どもの心を詩として表現した作家と言われます。『けんか』はゾロトウ らしい絵本です。
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※『けんか』 シャーロット・ゾロトウ文、ベン・シェクター絵、みらいなな訳、童話屋 1997年 (2022/6/26)