
電車の中のひとコマです。文章は冒頭にあるだけです。あとは「がったん」「がたたん たん」「キキキキキ--ツ」などのオノマトペだけです。絵が物語ります。
しらないひとどうしって
みんなしらんかおの つめたいかお。
でもね、こんなことがあると
しらんかおのほっぺが ぽっとあかくなって・・・
おとうさん
おんなのこ
おばあちゃん
おとこのこ
おにいさん
あかちゃんを抱いたおかあん
電車に乗り込んできた若者がいます。
・・・
おんなのこのかごから飛び出すねこ。おとこのこが捕まえてくれます。
キキキキキ--ツ。
急ブレーキです。
みんな体が斜めになっています。
おばあちゃんの紙袋から毛糸が飛び出します。
みんな、それを拾ってあげます。
でも、スケッチブックを持つ若者は なにもしません。
・・・
すずめが、
電車の窓から 飛び込んできました。
すずめは、床でぐったりしてしまいました。
心配な様子のみんな。
若者は、
すずめを拾い上げました。
みんなは見て見ぬを振りをしています。
(どうなるでしょうか)
若者は、すずめを窓から逃がしてあげました。

終点です。
みんな、そろって電車を降ります。
みんな、すこし親しくなって、
そして「しらんかおのほっぺが ぽっとあかくなって・・・」
・・・
こころ温まる日常の一コマです。
おはなしの展開とともに、画面の色彩が変化し豊かになってきます。その変化は、みんなの心の変化を表現しています。はじめはグレーで描かれていた人物たち。子どもはうす茶色で表現されてきます。女の子のかごから飛び出したねこを、男の子が捕まえます。その後、ふたりはカラーで描かれます。ねこを通して、互いに心が通じ合ったのです。まわりのみんなは、まだグレーで描かれています。しかし、乗客たちが心を交わすようになると、画面がだんだん明るくなります。カラーで表現されてきます。グレーで描かれていた青年も、最後はカラーで描かれています。絵を楽しむ絵本、絵を読む絵本です。
・・・
※『 がたたん たん 』 やすいすえこ作、福田岩緒絵、ひさかたチャイルド 1988年 (2020/1/14)