ふるはしかずおの絵本ブログ3

『おじいちゃんの ごくらくごくらく』 -ぼくとおじいちゃんの合言葉

おじいちゃんとまご(ぼく)のおはなしです。

お風呂にはいるときのおじいちゃんの口癖は「ごくらく ごくらく」。

「ごくらく ごくらく」は、ぼくの言葉になります。

       ・ ・・

ぼくの家は

 おとうさん、

 おかあさん

 おじいちゃんの4人家族です。

 おばあちゃんはいません。

 おじいちゃんは大工さんでした。

  

ぼくは、いつも、おじいちゃんといっしょ。

園の送り迎えのときも、

遊ぶときも、

お風呂も、

寝るときも。

        ・・・

お風呂にはいるとき、

おじいちゃんは、「ごくらく ごくらく」といいます。

「ごくらくって なに?」

しあわせな きもちに なることだよ

そして、ぼくも「ごくらく ごくらく」。

「ゆうたと ふたりで やまの おんせんに いこうか」

「いく いく!」

でも、

おじいちゃんは、入院することになりました。

入院の前の日に、

おじいちゃんを家のお風呂に入れてあげます。

入浴剤で白く濁ったお湯の中で、

ぼくは、おじいちゃんの腰をさすって、

「ごくらく ごくらく」と言いました。

すると、

おじいちゃんも、「ごくらく ごくらく」とつぶやきました。

      

しかし、

おじいちゃんは亡くなりました。

      ・・・

ぼくは、

おとうさんと、お風呂にはいっても、

おかあさんと、いっしょのときも、

「ごくらく ごくらく」と言います。

すると、おじいちゃんの やさしい かおが うかんできて、

ちょっと かなしいけど 

とても しあわせな きもちに なれます。

祖父や祖母の思い出は誰にもあることです。

絵本の中のぼくとおじいちゃんは、「ごくらく ごくらく」という言葉を通して繋がっています。 「ごくらく ごくらく」とぼくが言う時、ぼくはおじいちゃんのことを思い出すだけでなく、「おじいちゃんのことを忘れないよ」と言っているようです。大切なひと、もの、ことを忘れないようにするぼくの思いは、誰にもあることです。

別れは悲しいことですが、ぼくがいる限り、おじいちゃんが遺してくれた「ごくらく ごくらく」という言葉やおじいちゃんの思い出は決してなくなりません。

 

「ごくらく ごくらく」の言葉は、ぼくの記憶を繋ぎとめます。

        ・・・

※『おじいちゃんの ごくらくごくらく』 西本鶏介作、長谷川義史絵、鈴木出版 2006年

 

【追記】

この絵本を読んで父のことを書きたくなりました。わたしが小学校5年生のとき父は病気で亡くなりました。父との思い出は多くありませんが、自転車に乗ることを教えてくれたことは楽しい思い出です。また、お風呂のとき、足の指のあいだを丁寧に洗ってくれたことを思い出します。なぜそうするのかを話してくれたように思いますが、憶えていません。ずっと昔の小さな思い出です。しかし、いまでも風呂で足の指を洗うとき、父のことを思い出すときがあります。絵本の「ぼく」のように「しあわせな きもち」になることはありませんが・・・   (2021/1/24)

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