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おじいちゃんとまご(ぼく)のおはなしです。
お風呂にはいるときのおじいちゃんの口癖は「ごくらく ごくらく」。
「ごくらく ごくらく」は、ぼくの言葉になります。
・ ・・
ぼくの家は、
おとうさん、
おかあさん
おじいちゃんの4人家族です。
おばあちゃんはいません。
おじいちゃんは大工さんでした。
ぼくは、いつも、おじいちゃんといっしょ。
園の送り迎えのときも、
遊ぶときも、
お風呂も、
寝るときも。
・・・
お風呂にはいるとき、
おじいちゃんは、「ごくらく ごくらく」といいます。
「ごくらくって なに?」
「しあわせな きもちに なることだよ」
そして、ぼくも「ごくらく ごくらく」。
「ゆうたと ふたりで やまの おんせんに いこうか」
「いく いく!」
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でも、
おじいちゃんは、入院することになりました。
入院の前の日に、
おじいちゃんを家のお風呂に入れてあげます。
入浴剤で白く濁ったお湯の中で、
ぼくは、おじいちゃんの腰をさすって、
「ごくらく ごくらく」と言いました。
すると、
おじいちゃんも、「ごくらく ごくらく」とつぶやきました。
しかし、
おじいちゃんは亡くなりました。
・・・
ぼくは、
おとうさんと、お風呂にはいっても、
おかあさんと、いっしょのときも、
「ごくらく ごくらく」と言います。
すると、おじいちゃんの やさしい かおが うかんできて、
ちょっと かなしいけど
とても しあわせな きもちに なれます。
祖父や祖母の思い出は誰にもあることです。
絵本の中のぼくとおじいちゃんは、「ごくらく ごくらく」という言葉を通して繋がっています。 「ごくらく ごくらく」とぼくが言う時、ぼくはおじいちゃんのことを思い出すだけでなく、「おじいちゃんのことを忘れないよ」と言っているようです。大切なひと、もの、ことを忘れないようにするぼくの思いは、誰にもあることです。
別れは悲しいことですが、ぼくがいる限り、おじいちゃんが遺してくれた「ごくらく ごくらく」という言葉やおじいちゃんの思い出は決してなくなりません。
「ごくらく ごくらく」の言葉は、ぼくの記憶を繋ぎとめます。
・・・
※『おじいちゃんの ごくらくごくらく』 西本鶏介作、長谷川義史絵、鈴木出版 2006年
【追記】
この絵本を読んで父のことを書きたくなりました。わたしが小学校5年生のとき父は病気で亡くなりました。父との思い出は多くありませんが、自転車に乗ることを教えてくれたことは楽しい思い出です。また、お風呂のとき、足の指のあいだを丁寧に洗ってくれたことを思い出します。なぜそうするのかを話してくれたように思いますが、憶えていません。ずっと昔の小さな思い出です。しかし、いまでも風呂で足の指を洗うとき、父のことを思い出すときがあります。絵本の「ぼく」のように「しあわせな きもち」になることはありませんが・・・ (2021/1/24)