『 えが ない えほん 』とは、どういうことでしょうか ?
( ほんとに、絵がないの ? )
ほんとうに ないんです。
でも、海外でも、日本でも、大ウケです。
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この本をよむ きまりが、ひとつ あります。
かかれている
ことばは ぜんぶ
こえに だして
よむこと
なにが あっても
たとえば、
こんな ことばでも・・・
ばふっ ぶりぶりぶ ~!
( おなら、ウンチを想像する子どもも いることでしょう )
つぎのようなことばも、あります。
サルだよ ウッキ~ !
ぼくの あたまの なかみは なっとうの みそしる
おしり ブー ブー
まんかぺー
ばぶりんこ
おならぷ~
ブヒイ~ !
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また、絵はありませんが、書体や 文字の大きさや色などで 変化をつけています。まるで、絵のようです。(下の絵)
全米で、70万部以上も売れた絵本だそうです。
なぜ、子どもにウケるのでしょうか。
( 以下は、文字の多い 解説です。)
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その ①
ことばには、形、音、意味がありますが、ことばは、音声のなかで生きてきます。
絵本には、変なことばがならんでいます。いろいろな書体(形)がつかわれています。でも、これらのことばを、やはり声に出してよむことで、おもしろさが倍増します。耳から、面白い音がとびこんできます。子どもたちにウケる第1の理由は、やはり、言語表現のたのしさです。
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その ②
大人が読むというところに、もう一つの理由があるように思います。知識や決まりを覚えなければいけない子どもたち。一方、意味不明のことば、おかしなことばを言う読み手(大人)。子どもにとって、おとなは拠りどころです。でも、子どもと大人の関係には、いろいろな意味で、上下の関係があります。そのおとなが、サルになったり、「おしり、ブー、ブー」「おならぷ~!」「ばぶりんこ」と馬鹿なことを言う。「先生が(おかあさんが、おとうさんが)、あんなことを言っている・・・」。こうしたことが、子どものこころを解放するのでしょう。
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ところで、語り手( 読み手 )は、「おしり ブー ブー」と言ってみたり、自分のこころの中を語ったり、歌をうたったり、感動詞を入れたり、「 もう よまなくてもいい? 」と聞き手の答えを求めたりしています。語り手の、さまざまな声が、聞こえてきます。それをフォントや色を変えて表現しています。「 間 」もあります。一人芝居の戯曲のような絵本とも、言えるかもしれません。もちろん、観客( 聞き手のこども )もこの「 読みかたり 」の劇に参加します。「 読まなけゃ ダメ 」と呼びかけながら。
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また、読み手の大人が 試される絵本です。テンポ、調子、リズム、声の高低や強弱を変え、「間」をいかして劇をつくるように読んください。ことばで遊ぶという気持ちで、恥ずかしがらずに、読んでみてください。
( でも、すこし勇気がいるなあ )
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※『 えが ない えほん 』 B・J・ノヴァク さく、おおとも たけし やく 早川書房 2017年
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【 追 記 】
リリアン・スミスさんの言葉です。「子どもを歌や本にふれさせる最良の道は、感覚を通してである。小さい子どもは、読むことができない。そこで、かれらの喜びは、耳から、ことばのリズミカルな拍子から、音のつくりだす韻からくるのであって、必ずしもその意味からくるのではない。」『児童文学論』 (2017/12/19)