ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ヴォドニークの水の館』-「薪をもやしつづけよ。だが、壺の中はのぞくな」

チェコの昔話です

 

むかし

貧しい家の むすめが

ひもじさに みじめな気持ちになって 

川辺を あるいていました

 

川に 身を 投げようとしていたとき

水の主ヴォドニークが、むすめの命を すくいます

ヴォドニークは、むすめに いいました

     

 「ここでくらし、わしに仕えるのだ

  

ヴォドニークの館の 広間には、

ストーブがあり

その上に たくさんの ちいさな 壺が ありました

 

 「薪をもやしつづけよ。

 だが、壺の中はのぞくな

       

むすめが、ほうきで 館じゅうを はくと

ゴミは 金のつぶに かわりました

 

     

ある日

むすめは、カタカタという音を ききました

壺から、川で溺れ死んだ おとうとの声がします

むすめは、

壺の ふたを あけました

なにかが とびだしました

おとうとの たましいです 

たましいが 自由に なったのです

   

 「壺のふたを あけたな」

 「ごめんない、ゆるしてください」

 「つぎは いのちは ないぞ」

    

むすめは、きちんと つつかえましたが、

おとうとの たましいのことを 思いだすと

家に 帰りたくなりました

     

むすめは、金のつぶを もって

逃げだすことに しました

館を 出る前に 壺の ふたを ぜんぶあけました

 

 「さあ、じゆうになるのよ

    

     

けれど、どう逃げたら いいのでしょう

むすめが 水の世界を さまよっていると

ヴォドニークが おいかけできます

むすめは

くらい水の世界のなかに、ひかる穴を 見つけました

   

 「ここが 出口だわ!

      

むすめが あなに 飛びこむと・・・

そこは、あの岸辺でした

     

むすめは 金のつぶを 大切につかいながら 家族と たすけあって くらしました

        

              ・・・

主人公の貧しい境遇、敵対者・水の世界の主のヴォドニーク(援助者としての役割ももっています)、壺のふたを開けるなというタブー、ゴミが金になる奇跡、閉じこめられていた魂の解放、水の世界からの脱出、ヴォドニークが追いかけてくる危機、現実の世界への帰還など、昔話の骨格を備えたチェコのおはなしでした。

          

ひとを溺れさせる、緑色の身体をしているヴォドニークは、不気味な感じですが、壺のふたを開けたむすめを「つぎは いのちは ないぞ」と言って、ゆるすところもありました。しかし、人間の魂を「陶器の壺」にコレクションにする、やはり奇怪な人物です。

   

チェコの作曲家・ドヴォルザークに、ヴォドニークをテーマにした交響詩「水の精」があります。

   

※『ヴォドニークの水の館』 まきあつこ文、降矢なな絵、BL出版 2021年  (2025/9/4)

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