「 ラッキーボーイ 」という名のイヌがいました。
はじめ、ガスティン家に飼われていましたが、名前はありませんでした。「 おい 」と呼ばれていたのです。
その後、となりのおじいさんのイヌになります。
前半と後半で、このイヌはどのように表現されているのでしょうか?
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前半。
ガスティン家の人たちにとって、
このイヌは「 おい 」と呼ぶ存在です。
どうして飼われるようになったのか
だれもおぼえていない イヌ。
茶色によごれた イヌ。
家にいれない イヌ。
ドライブにつれていかない イヌ。
いつも臭いといわれている イヌ。
いなくなっても誰も気づかない存在 なのです。
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後半。
となりは、奥さんを亡くした、ミラーさんの家。
愛する妻をうしなって、ふかい孤独を感じています。
そこへやってきたイヌは、
ミラーさんにとって、
「 天国 から ふって きたのでは ないか 」と思えるのです。
きれいなベツトにのせることのできる イヌ。
イヌのしぐさに笑ってしまう ミラーさん。
「 ラッキーボーイ 」と名づけた イヌ。
話し相手の イヌ。
「 しっかり食べるんだよ!」
「 おまえのおかげで、 わしは幸せを取りもどしたよ! 」
「 小さな ぼうや 」といえるイヌなのです。
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疎外されたイヌと 孤独な老人。ふたりはつらい体験をしました。しかし、ふたりの出会いが、もう一度老人の人生をいきいきとさせます。ラッキーボーイは何もいいません。( イヌですからね。 )でも、ラッキーボーイと老人のあいだには、無言のコミュニケーションがあります。
言葉はなくても
相手をおもいやり
気づかうこころ があります。
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老人はこころを癒しふだんの生活をとりもどしました。ラッキーボーイも、しっぽをピンとあげ、おじいさんと散歩をしています。人生の真実をかたる絵本、愛の溢れる絵本です。
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※ 『 ラッキーボーイ 』 スーザン・ボウズ作、 柳田邦男訳、 評論社 2006年