まど・みちおさんの詩「くまさん」を、絵本(ましま せつこ絵)にしました。
くまさん まど・みちお
はるが きて
めが さめてくまさん ぼんやり かんがえた
さいているのは たんぽぽだが
ええと ぼくは だれだっけ
だれだっけ
はるが きて
めが さめてくまさん ぼんやり かわに きた
みずに うつった いいかお みて
そうだ ぼくは くまだった
よかったな
前連。
春、冬眠からさめた くまのおやこ。
くまのこは、
まわりのこと(たんぽぽ)は わかるのに、自分が誰だか分かりません。
ええと ぼくは だれは、だれだっけ
だれだっけ
笑えます。
・・・
後連。
川にきて、水にうつる 自分の「いいかお」をみて、
自分が 誰だかわかる くまのこです。
そうだ ぼくは くまだった
よかったな
ここも、笑えます。
ユーモアが あります。
絵本の絵には、たんぽぽ、すみれ、つくし、ふきのとう、ぜんまい、ちょうちょ、わらび、すぎのこ、ねこやなぎ・・・が 描かれています。春を彩るものたちです。
また、川にうつる自分を見て、自分が分かるくまさんを笑いながら、私も、くまさんと同じかも? と思います。私が私であることをわかるのは、自分をうつす川(鏡)が 必要なのかもしれません。くまさんの場合、自分がうつっているもの は「川」でしたが、私たちの場合、どこに自分がうつっているのでしょうか?
日常的な出来事と関わることのなかに、家族や仲間とともに生きることのなかに、あるいは仕事のなか、社会と関係するときに、自然のなかにいるときに・・・? わたしの外にある「もの」や「こと」を鏡にして、自分がわかるのかもしれません。「くまさん」の詩は、自分の内面を見つめるだけでは、自分が誰だかよくわからないとも言っているようです。童謡(小森昭宏作曲)ですが、まどさんの詩は、深読みしたくなります。
・・・
※『くまさん』 まど・みちお詩、ましま せつこ絵、 こぐま社 2017年 (2017/8/17)