ふるはしかずおの絵本ブログ3

『魔術師アブドゥル・ガサツィの庭園』

現実と幻想がないまぜになった、オールズバークの 不思議な世界

       

     

ミス・ヘスターさんの犬、フリッツは、

6回も いとこに 噛みついた 犬です。

           

アラン・ミッツという、近所の少年が、

へスターさんから、

留守番と フリッツの世話を たのまれました。

    

      
散歩のとき、

小さな 白い橋を わたると、

アランは 注意書きの 札を 見つけました。

   

    

  ぜったいに、なにがあっても、犬を庭園の中に入れてはいけません

          引退した魔術師・アブドゥル・ガサツィ

   

    

でも、

犬の フリッツは そんなことは おかまいなし。

庭園の中に 入って しまいました。

   

 「待て、フリッツ。よせったら!

     

アランは、フリッツを おいかけました。

     

       

森を ぬけると、

りっぱな お屋敷が ありました。

アランは、屋敷の主人・ガサツィさんに お詫びをしました。

ガサツィさんは、言いました。

    

 「ようこそ。中に はいりなさい・・・  

  あとに ついてきなさい」

   

庭で アヒルの群れに あうと、

ガサツィさんは、嚙みつくように 言いました。

   

 「わたしは いぬを みんなアヒルに かえてしまう

  ほら、これが 君のフリッツだよ

 

  時間がたたないと、魔法は とけないんだよ。・・・

  君の かわいいアヒルを つれてかえりなさい」

      

     

アランが、アヒルといっしょに 帰る時

風が 吹いて、

アランの帽子が ふきあげられると・・・     

アヒルが 

アランの帽子を くわえ

空高く上がり、どこかへ 姿を 消してしまいました。

   

   

アランは、

ミス・へスターさんに

ガサツィさんの庭での 突拍子もない できごとを はなしました。

すると、彼女は 言いました。

   

 「あなたは ガサツィさんに からかわれたのよ・・・

  わたしが帰ったとき、フリッツは 庭にいたわよ

   

      

アランが 帰ったあと

ミス・へスターは 犬の フリッツを 呼びました。

フリッツは、口に くわえていたものを ひょいと 落としました。

それは アランの帽子です。

    

 「おまえは しょうがない 犬だわねえ

  アランの帽子に いたずらしちゃ いけないでしょう

      

             ・・・     

『魔術師アブドゥル・ガサツィの庭園』では、空想とも現実とも区別がつかない世界が広がっていました。そして、不思議な旅をして、帰ってきたアランと読者です。犬のフリッツが、本当にアヒルになったのか、ならなかったのかは分かりません。ミス・へスターの最後の言葉が謎を深めます。

       

「もう魔法を信じるような年じゃないんだもの」とアランは言っていますが、心のなかで、まだ夢と現実を行き来して生きているように思います。読者も同様です。このような人物(アラン)と読者の存在が、ファンタジーの世界をささえます。

    

          ・・・

※『魔術師アブドゥル・ガサツィの庭園』 クリス・ヴァン・オールズバーグ絵・文、村上春樹訳、あすなろ書房  2005年   (2025/2/25)

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