
イソップの寓話です。
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ヘンリーと ヒルダは
夜明けから くらくなるまで、骨身を惜しまず はたらいた。
バイオレットという名の 牛
二ひきの ぶた
年老いた 馬の ペギー
知りたがり屋の しろい がちょう
がいた。
ある晩、ヘンリーは、ヒルダに たずねた。
「農場のくらしは しあわせかい」
「お金は、たんとは かせげないけど、
ひつようなものは なんでもあるわ。
これいじょう、なんにもいらない」
翌朝
ヘンリーが 納屋から とびしてきた。
「がちょうが 金のたまごを うんだんだ!」
次の朝も
がちょうは 金のたまごを うんだ。
ふたりは、楽な暮らしができるのを 夢みた。
がちょうは 金のたまごを 産みつづけた。
ふたりは、
馬のペギーを 売り、
きたない荷馬車を 燃やし、
あたらしい馬と 上等の荷馬車を 買った。
ところが
ある朝のこと、
がちょうは 金のたまごを 産まなくなった。
ヒルダは 怒りだし、ヘンリーに 言った。

「しまつして。お腹をひらいて たまごを とりだすわ」
ヘンリーは がちょうを 始末したが、
お腹に 金のたまごは なかった。
ヒルダは 言った。
「金のたまごは 不幸せをはこんで きただけだわ」
ヘンリーは 答えた。
「けれど、ひとつ 学んだな。
いま あるもので まんぞくする、いうことをね」
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ヘンリーとヒルダは、「ひつようなものは なんでもある」から、「いま あるもので まんぞくする」生活の大切さを学びました。
教訓話ですが、怖い話にも聞こえました。金のたまごを手に入れると、ふたりは楽な暮らしをしようと、あたらしい馬と上等の荷馬車を買いました。こうした欲望はわかります。しかし、金のたまごを手にいれられなくなると、ヒルダは怒りだし、「しまつして。お腹をひらいて たまごを とりだすわ。あたしゃ 金持ちのままで いたいんだから」と 金切り声で 怒鳴ります。
金のたまごは、つつましく生きてきたヒルダを変えました。こうも簡単に人間は変わるものだろうかと考えさせられます。怖い話です。
欲深き人の心と降る雪は積もるにつれて道を失う 高橋泥舟
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※『金のたまごをうんだがちょう』 イソップ童話 ジェフリー・パターソン作 晴海耕平訳、童話館書店 1996年 (2024/7/10)