世界の織物の、歴史と文化を描いた絵本です。
国をこえ
時をこえで
布のように ふんわりと わたしをつつむ ものがたり
つくりかたを 秘密に された 中国の 絹
ミイラづくりに つかわれた エジプトの 亜麻
祈りのときに 敷く イベリア半島の じゅうたん
西アフリカの フラニの 人たちは、
移住生活の なかでも 布を織る
人と人とのつながりを はた織りの音は うたってる
シュットン シュットン シュットントン・・・
持ち運びのできる 織り機を もつ
ペルーの山で くらす 人たち
ヨーロッパから アメリカに渡った 人たち
たどり着いた地で 布を織った 人も いた
カナダの セイリッシュの 人たちの 布には
色にも 模様にも 意味があり
ふしぎな力を もつといわれる
布には 世界が 織りこまれている
はた織りの音が うたうのは
人の つながり
人の ぬくもり
人びとの くらし
きっと わたしたちも・・・織物みたいな ものなんだ
じょうぶで あたたかく やわらかく
もように意味が こめられた
うつくしい布になる とちゅうなの
美しい絵、詩のような文章です。ボローニャ・ラガッツィ賞ノンフィクション部門優秀賞を受賞した作品というのも頷けます。
自然、風土、文化、宗教、歴史、生活と結びついた世界各地の織物を紹介しています。実用であり、美的な織物たちです。
巻末に「世界のいろいろな織物」の説明があります。その一節です。
「自分たちがどんな人たちで、どんな文化をもっているのかをあらわした織物には、物語がこめられています。目に見えない精霊たちの世界とつながっていたり、人生の中のたいせつなできごとをつたえていたりする」
・・・
※『糸をつむいで 世界をつないで』 ケイティ・ハウズ文、ディナラ・ミルタリポヴァ絵、中野怜奈訳、ほるぷ出版 2024年 〈2025/1/10〉