ふるはしかずおの絵本ブログ3

『海辺の村のパン』- 「ここでは みんなが いっしょうけんめい はたらいている」

「ぼく」は、働くことの意味、社会とはなにかについて学びました。

     

       ・・・

海のそばにある、ぼくらの村

魚を売る店、くんせい屋、かじ屋 かご職人の店、肉屋、パン屋、カフェ、ざっか屋がある。

    

     

誰もが、海のそばで 働いている。

帆職人、船大工、あみ職人、ロープ職人、たる職人。

女の人たちが 魚をさばき、樽につめて、塩漬けにする。

海は、みんなの生活の まんなかにある 心ぞうだ

   

     

漁師たちが 魚をとっている あいだ 

村は ねむる。

しずかな部屋で、ぼくは 思いうかべる

寒さと雨のなかで はたらく人たちのことを。

 

 おそれを 知らない 漁師。

 あらしと たたかう 漁師。

 

ぼくは 大きくなったら、漁師になる。

生きのいい おいしい魚を とるんだ

   

  

ぼくの とうさんは、漁師じゃない。

とうさんは パン屋だ。

    

どうして 漁師に ならなかったんだろう。

どうして ただのパン屋なんだろう。

    

    

 「漁にでたこと、ある?」

 「あるよ。子どものころにな。・・・

  海にでて むいてないと わかったんだ」

    

 「とうさんが パン屋になったのは、

  パン屋に なりたかったからだよ」

  

 「パンや バンズや ビスケットがなかったら、どうなると思う?」

  

    

とうさんは、語ります。

船大工、女のひとたち、漁師たちが、

どんなに 困ることだろうかと。

だから、

毎日、

太陽が のぼる前

船が  もどる前

パンを焼いて 届けていると。

    

 

へとへとの 漁師が やってきた。

ふたりは、くたびれた顔で 微笑みあった。

漁師は、なにも いわずに

いきのいい魚を とうさんに わたした。

    

それを見て、ぼくは ほこらしく思った。

ぼくは、おおきくなったら、パン屋になる。

とうさんみたいに、この村で。

    

 ここでは みんなが いっしょうけんめい はたらいている

 

           ・・・

パン屋の息子の「ぼく」の視点から、海辺の村の生活が語られます。漁師にあこがれている「ぼく」。村のみんなが、漁で生計をたてているのに、父親が漁師ではないことにね後ろめたさを感じています。とうさんは、自分の仕事を息子に語りました。パン屋という仕事が、村の人たちにどんなにたいせつかを。

         
 「ここでは みんなが
  いっしょうけんめい はたらいている」。
    
   
ぼくは、とうさんも、そのひとりであることが わかりました。

そして、パン屋になる決意します。
    

     
はたらくことの価値、意味について、ぼくとともに考えます。

      

         ・・・

※『海辺の村のパン』 ポーラ・ホワイト作、いけださちこ訳、BL出版 2024年  (2024/8/25)

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