ふるはしかずおの絵本ブログ3

『最初の質問』- 「いちばんしたいことは何ですか」

      

  今日、あなたは空を見上げましたか。

  空は遠かったですか、近かったですか。

     

    

長田弘さんの詩「最初の質問」は、こうして はじまります。

印象的な詩句を あげてみます。

     

  

 「ありがとう」という言葉を、今日、あなたは口にしましたか。

   

    

 「うつくしい」と、

 あなたがためらわずに言えるものは何ですか。

    

 あなたにとって

 「わたしたち」というのは、誰ですか。

   

    

 何歳のときのじぶんが好きですか

 上手に歳をとることができるとおもいますか。

 

   

 これだけはしないと、心に決めていることがありますか。

 

   

 あなたにとって、

 あるいはあなたの知らない人びと、

 あなたを知らない人びとにとって、

 幸福って何だとおもいますか。

 

   

 時代は言葉をないがしろにしている ―

 あなたは言葉を信じていますか

       

  

「あなた」にむけた「最初の質問」の数々です。

「あなた」とは誰でしょうか。語り手はだれに向かって、「あなた」と言っているのでしょうか。「何歳のときのじぶんが好きですか。/ 上手に歳をとることができるとおもいますか」の言葉から、想定される「あなた」は若い人のように思われますが、年齢に関係なく、未来を拓こうとしているすべての「あなた」です。

     

     

質問には、言葉で考え、言葉で表現しなければならないでしょう。

言葉を信じ、自分の言葉をもってほしいという、語り手の、作者の願いがあります。

   

    

いせひでこさんの絵にも、印象的な絵があります。

どっしりした木のそばを、鞄を引きずりながら、泣いているおとこのこがいます(上の絵)。別のページには、雪の積もったおなじ大木を見あげる男性がいます。「おとこのこ」と「男性」の関係を想像し、ふたつの絵の間の長い時間を考えます。いせひでこさんの絵は、絵の中にドラマを創造しています。絵は、詩の世界をひろげています。  

     

タンポポとシロツメクサなどの草花の中に 眠っている 子ども。

「人生の材料は何だとおもいますか」という詩句に、添えられた使いかけの 絵の具。

      

うつくしい水彩画です。「意味」を含んだイメージの数々です。

 

       ・・・

※『最初の質問』 長田弘詩、いせひでこ絵、講談社 2013年  (2024/8/23)

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