戦争についての箴言のような文章です。
その一部を紹介します。
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戦争は、何も聞かない、
何も見ない、
何も感じない。
戦争は、ありとあらゆる恐怖が集まって、
残忍な姿に化けたものだ。
戦争は、憎しみ、野心、恨みを糧とする。
戦争は、
何も知らない人たちの柔らかな夢に入りこむ。
戦争は、物語を語れたこともない。
戦争は、鋼と影の子どもたちを生み出す。
戦争は、廃墟の街を支配するのが好きだ。
戦争は、轟音とカオスだ。
戦争は、沈黙だ。
ポルトガルを代表する文学者の詩です。物語で語るのではなく、戦争の本質をえぐりだすような詩句です。全部を紹介できませんが、上にあげた文から、戦争の悲惨さ、無慈悲さ、残酷さ、また人間性を奪う恐怖を感じ取ることができるでしょう。
著者のジョゼ・ジョルジェ・レトリアは、40年にわたるポルトガルの独裁体制に抗してきた詩人、作家、ジャーナリストです。息子のアンドレの絵は、蠢く不気味な生物、無機質な世界、立ち並ぶ兵士、爆撃機の編隊、雨のように落ちる爆弾、破壊される都市、廃墟の絵を組み合わせ、「カオス」と「死」の戦争の実態を描いています。
「戦争は、物語を語れたことがない」という、詩句につけた絵は、山積みになった本が燃やされようとしている絵(上の絵)です。
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※『戦争は,』 アンドレ・レトリア文、ジョゼ・ジョルジョ・レトリア絵、木下眞穂訳、岩波書店 2024年 (2024/6/28)