ふるはしかずおの絵本ブログ3

『戦争が町にやってくる』- 戦争は、だれひとり、みのがしません

表紙のあかいヒナゲシの花は、第一次世界大戦で亡くなった人びとを追悼するシンボルです。ウクライナの絵本作家の作品です。

  

 

ロンドという町に住む 3人の人物

 

 ダーンカ

 ファビヤン

 ジールカ

   

     

ダールカの からだは 電球のように 光っていました

ファビアンは 宝さがし犬の子孫

ジールカは 紙の翼を はばたかせ 飛ぶことができます

    

    

ロンドは、

花で 有名な町でした。

温室の花たちは、歌を うたいます。

コンサートを ひらき、合唱します

   

 

そんな しあわせな町に

とつぜん

戦争が やってきたのです

    

   

戦争は 

棘のある かたい雑草を 道に うえていきます

花たちは かれました

ダーンカの胸に 石があたり ひびが走り、

ジールカの翼を 火花が もやしました

  

   

 戦争は、だれひとり、みのがしません

 

 

ダーンカと ファビヤンは

戦争を とめるために

戦争の心臓を ねらえばいい、とかんがえました。

しかし・・・

    

 戦争にはこころも心臓もありません 

    

ダーンカは

花を 救おうと

自転車をこぎ、ちいさな光を あてました

花びらが 明るく なりました

光は 戦争のほうに のびていきました。

 

  

すると

戦争が 立ちすくんで

動かなく なったのです

   

    

ダーンカと 花たちが 声をあわせて 歌うと

闇を なくすことが できました

   

戦争を とめるには、

たくさんの 光をだす おおきな機械をつくればいい

   

   

みんなは 光の機械を つくりました

みんなは ロンドの町の歌を うたいました

    

 

戦争は、光のなかで とけだしました

光が 明るくなるにつれ

歌ごえが 大きくなるにつれ

戦争は どんどん とけていきます

    

     

 戦争に勝ったのです!

    

いま、町に咲いているのは、どれも 赤いヒナゲシです

    

           ・・・

「戦争は、だれひとり、みのがしません」「戦争にはこころも心臓もありません」という言葉が、心に響きます。当事者の鋭い言葉です。戦争の残酷・悲惨さと平和の尊さを描いた絵本です。

    

また、「光」「歌声」は、人びとの団結を象徴するものです。これらによって、戦争がすぐになくなるものではありませんが、この絵本が子どもを励ますために創作されたことを忘れてはならないと思います。未来への希望を語っています。

    

       

絵本は、2015年に発刊されました。絵本のなかの戦争とは、2014年の「ウクライナ紛争」のことだと思われます。ロシアのクリミア併合をきっかけとして起こった、ウクライナ政府とロシアを後ろ盾とする親ロシア派との紛争で、現在のウクライナとロシアの戦争の大きな要因のひとつです。

     

          ・・・

※『戦争が町にやってくる』 ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ作、金原瑞人訳、ブロンズ新社 2022年  (2025/5/18)

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