「フランケンシュタイン」(1818年)の誕生秘話です。
絵本のストーリー自体が、スリルとサスペンスに 満ちています。
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200年前の ある嵐の夜
メアリ―は、
スイスのレマン湖畔の 別荘に 滞在していました。
別荘の持ち主は、詩人の バイロン卿です。
彼は、こんな提案を しました。
「怪談を書いて、一週間後に 読みくべてみよう」
メアリーは作家志望でしたが、いいアイディアが 浮かんできません。
子どものころ、
電気を使って、
死体をうごかした実験のことを 思いだしました。
「死者がよみがえるなんて、おそろしいこと。
でも、よみがえった死者として
生きることのほうが、
もっとおそろしいことかもしれない・・・」
夜が 更け、
雷鳴が とどろき、稲妻が ひかります。
そのうち、まるで 夢の中のように、
台の上に 大きな体が 横たわっているのが、見えてきました。
ろうそくを手にした 若い学生も 見えてきました。
彼は、
自然の秘密を あばこうとして、
台の上の死者に いのちを あたえてしまったのです。
でも、どうしてよいか、わからなくなり、
学生は、逃げだしました。
怪物が、
ねじ曲がった 灰色の手で
カーテンを あけようと しています。
カーテンが ひらくと・・・
怪物の
とびだした 黄色い目が のぞくのです。
メアリーは、ハアハアいいながら ベッドから起き上がりました。
すべては 空想の中の できごとでした。
心臓は ドキドキ していましたが、
メアリーは、うれしく なってもいました。
ようやく物語が生まれてきたからです。
メアリー・シェリー(1797-1851)は、作家のメアリ―・ウルストンクラフト(1759-1797)と、政治評論家で無政府主義者のウィリアム・ゴドウィン(1756-1836)のひとり娘として生まれました。
メアリーが、ロケットペンダントの母の写真をみて、母のことを思いだす場面があります。母親のメアリ―・ウルストンクラフトは、男女平等を主張し本を出版した、フェミニズムの先駆者でした。メアリーは、女の人が書いたものだって男の人が書いたものに負けないはずだ、と写真の母に勇気づけられます。そして、おかあさんの考えが正しいことを示したいと思いました。
原作は、ハリウッド映画とは違い「憎悪と偏見によって、無邪気な存在が凶悪な存在にかわるかもしれない、というメッセージが読み取れる」(作者あとがき)ものでした。
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※『怪物があらわれた夜』 リン・フルトン文、フェリシタ・サラ絵 さくまゆみこ訳 光村教育図書 2018年 (2024/8/25)