登山を通して、富士山の自然と文化をつたえる写真絵本です。
とおくから見ているだけじゃ、つまらない。
冬のある日、ぼくは富士山にのぼることをした。
ゆっくりと、すこしずつ歩く。
そうすれば つかれない。
息は、はいて、はいて、すう。
山にのぼるときは、はくことがだいじだ。
夜
風が、テントに 体あたりしてくる。
眠りながら、ふもとの森のことを かんがえた。
シカやキツネもいる ゆたかな森
「青木ヶ原」
「氷穴」
「風穴」
朝日を あびながら、
ぼくはまた、ふみ出した。
風は 荒れ狂い、
サングラスの中まで、雪が飛びこんでくる。
富士山は、いまもまだ 生きた火山だ。
木が育たない、高い場所でも、
小さな植物が、根をはって 生きている。
頂上が見えた!
ついに、ぼくは、のぼりきった。
自分の足で歩いてきたぞー!
富士山
そこにのぼれば、
かならず、新しい世界にであうことができる
見なれた姿の中に、
しらないことがたくさんある。
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エベレストをはじめ、7大陸の最高峰すべてを登頂した石川直樹さん。登山者でなければ、語れないリアルな表現があります。また、登山を語る言葉は、人生の真実を伝える言葉ともかさなります。
「吉田の火祭」も紹介されています。また、巻末には、冬の富士山に登るための「ぼくの装備一式」があります。アイゼン、ピッケル、防寒着とともに、トイレットペーパーがありました。「鼻をかんだり、汚れた食器をふきとるのにも使う。使った紙は、その場にすてず必ずもち帰る」。
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※『富士山に のぼる 増補版』 石川直樹文・写真 アリス館 2020年 (2024/7/14)