ぼくも大きくなるのかな、心配な「ぼく」のはなしです。
春
草木に 若葉が かおを だし、
ライラックの つぼみが ふくらんでいく。
ぼくは おかあさんに たずねます。
ヒヨコ コイヌも 大きく なるのかな?
ぼくも 大きく なるのかな?
もちろんよ
ぼうやと おかあさんは 畑に トウモロコシの 種を まく。
ぼうやは 厚手の 服は 秋まで しまっておく ことにしました
果樹園は 花ざかり
ライラックの 花が ひらく
ヒヨコ コイヌも 大きくなった。
ぼくも 大きく なるのかな?
バラが咲き、
トウモロコシは せいたかのっぽ。
ナシの実は うれていく。
ヒヨコ コイヌは ますます 大きくなった。
ほんとに ぼくは、大きく なるのかな?
秋
木の葉が 赤や きいろ、ちゃいろになり、
ヒヨコは ニワトリに、
コイヌは おとなの イヌに なった。
きみたちは ちゃんと 大きくなった
ぼくは ならない、小さなままだ
空気が 冷たくなり、おかあさんが 言った。
厚手の 服を だしましょう。
この ずぼん ぼくには きついし みじかいぞ
この うわぎ ぼくには きついし そでも みじかい
ぼくの ずぼんや うわぎは きつすぎるし、みじかすぎ
ぼくは くるりと ちゅうがえり
ぼくは 大きく なったんだ
・・・
季節が移り変わり、ヒヨコやコイヌはどんどん大きくなっていくのに、ぼくは、自分がおおきくなったのかどうか不安です。でも、秋に前の年に着ていたずぼんや上着が小さくなっていることを発見しました。自分が大きくなったことを確認しました。体だけでなく、こころも大きくなっていることでしょう。
ヘレン・オクセンバリーの絵は、ぼくの表情を見事にえがいています。最初のページのぼく。最後マページのぼくは、やはり違います。ぼくは大きくなりました。また、動物、自然、生活をていねいに美しく描いています。
・・・
※『大きくなるってこんなこと!』 ルース・クラウス文、ヘレン・オクセンバリー絵、山口文生訳 評論社 2014年 (2024/11/9)