
半日村とは、
半日しか、日の当たらない 村のこと。
村の裏手に 高い山が あるせいで、
お昼ごろになって、やっと 光が さしてきます。
お米は、よくとれず
村の ひとたちは
みんな 痩せて、青い顔して、元気がなかった
一平は
山を 小さくしようと 決意した
袋を かついで、山に のぼり
てっペンの土を 袋につめて おりてきた
それを 湖に すてた
「おらは、あの山を みずうみに
うめちまおうと おもっているんだ」
子どもたちは、みんな、大笑いした
一平は
まいにち まいにち
なんども、なんども くりかえした
子どもたちは、なんだか おもしろそうな気がして、
袋を かついで、山に のぼりはじめた

おとなたちは、
「山が うごかせるもんじゃねえ」と 言っていた
でも、
子どもたちに
もっこを もたたせ、掘り方や 担ぎ方を おしえはじめた
村中の おとなたちが 山に のぼりはじめた
せっせ、せっせと
山を のぼり、土を はこんだ
何年も
何年も たった
一平は おとなに なった
一平の 子どもも
仲間の 子どもも もっこをかついで 山に のぼった
ついに
山は
半分になって、朝日がぱっとさす 村になった
それから、半日村は、
一日村と 呼ばれるようになった
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「愚公、山を移す」の諺のような話です。中国の故事では、天帝が、愚公の志に感じ入り、山を動かし平らにしましたが、『半日村』では、一平の信念が、まわりの人々を動かし、山を動かします。人々の幸せのためという目的は同じですが、誰が山を動かしたのかに違いがあります。人びとの力で山を動かすところに、作者の思想があります。
滝平さんの切り絵は、人物の表情・気持ちを描き、みごとな作品です。
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※『半日村』 斎藤隆介作 滝平二郎絵 岩崎書店 1980年 (2025/11/1)









