ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ルリユールおじさん』- 「おじさんの手って木のこぶみたい」

ルリュールとは、フランスで製本・装丁を手仕事でする職人のことです。

    

      ・・・

ある朝、

ソフィーの 植物図鑑が 

バラバラに なってしまいました

この本を なおしたいの、と本屋さんにきくと・・・

   

 「そんなに だいじな本なら。

  ルリュールのところへ 行ってごらん

     

    

でも、どこに いるのかしら?

街を さがし まわりました。

ようやく 見つけた「RELIEUR」の看板。

中にはいると、

  

 わあ、ぐちゃぐちや!

 おじさん、そうじしたことあるの?

  

 なにがどこにあるか、みんな わかっとる

 

 

おじさんは、ソフィーに 製本の工程を おしえてくれました。

      

おひるになり、

ふたりは 公園に いきます。

おじさんは、

アカシアの 大木の前の ベンチにすわり、

ルリユールも、このアカシアと 同じくらい

400年も続いてきた仕事だ、とはなします。

 

 

 

おじさんの回想です

     

 ルリュールだった父は、いつも言っていた。

 

 「ぼうず、あの木のように おおきくなれ」

  名を のこさなくてもいい。

 「ぼうず、いい手をもて」

 「とうさんの手は魔法の手だね」

      

      

  わたしも魔法の手をもてただろうか

   

 

       

つぎの日、

ソフィーは うまれかわった本を 手にします。

表紙に 金文字が あります。

     

 「ARBRES de SOPHIE」― ソフィーの木たち

    

おじさんの本は、二度と こわれなかった。

そして、私は、

植物学の研究者になった。

     

      ・・・

おじさんの回想の中の 父の言葉です。

「本には大事な知識や物語や人生や歴史が いっぱいつまっている。それらをわすれないように、未来にむかって伝えていくのが ルリュールの仕事なんだ」。職人の誇りが詰まっている言葉です。絵本のなかに描かれている、おおきなアカシアの木と ルリュールの仕事がかさなってきます。

   

いせひでこさんの水彩画は、ソフィーとおじいちゃんの姿をいきいきと描いています。また、製本工程を絵で表現しています。ものを作る人(ルリュール)への尊敬のまなざしを感じます。

        

「あとがき」の作者の言葉によれば、現在、製本工程の「すべてを手仕事でできる製本職人はひとけた」だそうです。

     
         ・・・

※『ルリユールおじさん』 いせひでこ作 講談社 2011年  (2024/9/3) 

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