ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ペンギンのウィリー』- 自分とは何かを探す

「アイデンティティ」をさがすウィリー

自分探しの旅にでます。

    

     

ペンギンのウィリーは

ペンギンたちと おなじに 見えるのが いやでした

ペンギンのなかでは、だれが だれやら、見分けが つきません

     

ウィリーは、じぶんを 変えようと、町へ いきました

      

町では

みんな ウィリーとは 違います

みんな、ウィリーを 見つめます

レストランでも

地下鉄でも

  

でも、ウィリーは めだちたかったわけでは ありませでした

     

ウィリーは

蝶ネクタイ

革靴を

シルクハットを 買いました

傘も さしました

     

オペラを 見にいくと、みんな、

黒い服、シルクハット、蝶ネクタイです

ウィリーと そっくりです

だれが だれやら、見わけが つきません

これでは まえと いっしょです

    

ウィリーは、

南極に かえることに しました

      

でも、南極でも、蝶クタイ、革靴、シルクハット

傘をさして あるいていました

    

 ピューッ!

 

風が

シルクハット

蝶ネクタイが 

空高く ピューッ!

ウィリーは、革靴を ぬぎすてました

    

ウィリーは、いま とっても しあわせです

    

    

 ぼくは ぼくだもの

 ぼくが そうおもってれば、それで いいや!

 はぁ、すっきりした!

  

           ・・・

ウィリーは人間社会を経験したいと思い、住みなれた南極を飛びだしました。でも、町は、彼のいる場所ではないと気がつきました。「自分を変えよう」と町へいく彼の試みは、うまくいきませんでしたが、自分がどのような存在なのか、気づく機会になりました。みんなと同じ姿形でも、「ぼくは ぼくだもの」。ウィリーは、自分は自分のままでいいことに気がつきました。南極から出て、町に行き、南極に帰ってきたウィリーは、ヘーゲルの言う、アウフヘーベンすることで新たな存在価値を発見・創造しました。

     

ウィリーは、これから、ペンギン社会のなかで、他者との関係をいろいろと築きながら、自分とは何かをさらに深めていくことでしょう。

      

        ・・・

※『ペンギンのウィリー』 ロバート・ブライト作、小宮由訳、好学社  2024年

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