
海外へ働きにいっているパパのもとに行くことになった「わたし」。
故郷を離れる「わたし」の複雑な思いです。
日曜日が 大好きな わたし
だって、パパから電話が かかってくるから
パパとは なかなか会えない
ノートに、その日あったことを 書いている
クリスマスに
ノートを送ってあげたら
1年をプレゼントされたみたい、とパパは よろこんだ
日曜日の朝
ママと おばあちゃんと 犬のキケが
パパの電話を 待っている
やっと電話がなった!
でも、きょうは、
パパから 思いがけない 言葉があった
「こっちへきて、いっしょに くらさないか?」
わたしは だまって しまった
電話のあと
頭のなかが ごちゃごちゃに なった
パパに あえるのは すごくうれしい
だけど、よその国に行くのは ちょっとこわい
友だちは できるかな
おばあちゃんは いかない
おばあちゃんと はなれたくない
おばあちゃんは いっぱいキスを してくれた
だいすきな キケは いけない
わたしは、キケに ささやいた
「わたしのこと、わすれないでね!」

飛行機の なかで
わたしは 2冊のノートを とりだした
1さつは、パパのために書いてきた ノート
でも もう書かなくても いい
わたしは もう1さつのノートを ひらいた
真っ白な ノートに わたしは こう書いた
おばあちゃんへ
今、ひこうきの中です。
どこかの海の上にいます。
かんがえると、こわいよ!
でも、おばあちゃんに 書いていたら、
空にうかんで、ひろい海の上を とんでいるのを
わすれられます。
・・・
パパと一緒に暮らせるのは嬉しいけれど、みんなと別れるのはつらい、少女の複雑な思いを丁寧に描きだしています。「わたし」と家族の情景を描いたリベラの絵が魅力的です。「わたし」の豊かな表情から、彼女の心理を想像します。また、「わたし」がノートに描いた絵、持っていきたいものの絵は、彼女のこころを映しだしています。
読み終わって考えます。彼女はどこに行ったのでしょうか。パパはアメリカで働いているのでしょうか。「わたし」と同じような子が、ラテンアメリカには数多くいることでしょう。故郷を離れて、いまどのような生活をしているのでしょうか。かれらのしあわせを願わずにいられません。
・・・
※『パパのところへ』 ローレンス・シメル文、アルバ・マリーナ・リベラ絵、宇野和美訳、岩波書店 2014年 (2025/6/13)