ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ハーモニカのめいじん レンティル』- 動きのあるダイナミックな絵

オハイオ州アルトという町に レンティルという おとこのこが すんでいました。

レンティルは、歌がへた。

口笛も ふけませんでした。

そんな彼が 活躍する場面が できました。

    

   

レンティルは 

音楽が できるようになりたいと

お小遣いを ためて ハーモニカを 買いました

   

ひまさえあれば

ハーモニカの練習を しました

学校へ いく道も、

ずっと ハーモニカを 吹きながら いきました

      

     

あるとき

まちの発展に 寄与した

このまち いちばんの 有名人

カーターたいさが 帰ってくることに なりました

   

   

まちの みんなは、歓迎会の計画を たてました

吹奏楽団も あたらしい制服を つくりました

    

当日

カーターたいさを 駅で むかえる

そのときに

 「しゅるるっ!

 「じゅうーっ!

にがむしじいさんが、屋根の上で レモンをすっているのが

目に入りました

   

みんな 口が すっぱくなって

すぼまって しまいました

吹奏楽団の ひとたちも

口が すぼまってしまって 楽器を 吹くことが できません

   

    

口を すぼめることが できない

レンティルは ハーモニカを とりだし

かわいい あのこが やってくる」の曲を 吹きはじめました

   

   

カーターたいさは

にっこりして

かわいい あのこが やってくる

 六とうだての ばしゃに のってくる!

とうたいだしました

みんなも、うたいだしました。

     

   

カーターたいさは いいました。

  

 「すばらしい かんげいを うけて、

 たいへん かんげきしている・・・

 こんどは まちに あたらしいびょういんを きふする」 

 

    

まちじゅうのひとが とても よろこびました。

あの にがむしじいさんも おおよろこびでした。

 

   

 これで みなさんにも、ハーモニカが ふけるようになると、

 どんなにいいことが おこるか おわかりでしょう。

 

            ・・・

ロバート・マックロスキーは『かもさんおとおり』の絵本(1942)でご存知の方も多いことでしょう。

マックロスキーの絵は、人物の表情、街の景観、自然、ものごとの動きが、いきいきと表現されています。歓迎会の雑踏、汽車の音、ハーモニカや吹奏楽の音楽まで、聞こえてきそうです。

   

また、鳥観図、ロングショット、クローズアップなど、さまざまなショット・サイズが駆使されていて、『かもさんおとおり』と同じように、とても映画的です。絵本に動きをうみだしています。オハイオ州アルトという町は鳥観図で描かれています。

   

「かわいい あのこが やってくる」の楽譜も巻末にあります。訳者の解説によると、もともとこれは汽車の歌で、「かわいい あのこ」とは汽車のことなのだそうです。

   

          ・・・

※『ハーモニカのめいじん レンティル』 ロバート・マックロスキー文・絵 間崎るりこ訳 国土社 2000年(初版1940年)  (2025/5/6)

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