ハリネズミやリスたちの行動は、わたしたちの生き方を逆照射します。
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森の奥の 草むらで、
ハリネズミが 小さな金貨を 見つけました。
「わしも 年をとった。干しキノコでも買って
のんびりと 冬をすごすとしよう」
でも、干しキノコは もう どこにも 売っていません。
リスが 木の上から 尋ねました。
「こんにちは おじいさん! キラキラしているのは なあに?」
「金貨じゃよ 冬ごもりのため、キノコを 買おうと思ってね」
「キノコが ほしいなら、ただであげるわ!
金貨は、靴に つかうといいわ」
「ありがとう、リスさん!」
カラスが 靴屋をさがしている ハリネズミに 声をかけます。
「どうしたね。おとしものかい?」
「この金貨で、靴を かおうとおもっての」
「靴ぐらい おれが つくってやるよ!」
「ありがとう」
「金貨は、あったかい靴下にでも つかいなよ」
クモに 出会います。
クモも 自分が編んだ靴下を ハリネズミに あげました。
わが家に 近づいたとき、
ハリネズミは、大事なことを おもいだしました。
「ハチミツを 忘れとった。
冬にでる せきは、あれがないと とまらんのに・・・」
「おじいさーん!」
子グマが おいかけて きました。
いつも、お話しを してあげていた 子グマでした。
「はい! これ お母さんから」と言って、
子グマは、ハチミツを 手わたして くれました。
冬ごもりの ための
干しキノコ
あたらしい 靴
あったかい 靴下
ハチミツ
を 手にいれることが できました。
ハリネズミは、考えました。
「金貨は だれかの 役にたつかもしれん」
ハリネズミは、
金貨を 道ばたに おき、
わが家に むかって 歩きだしました。
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ハリネズミのおじいさんは、冬ごもりのための干しキノコ、靴、靴下、ハチミツを お金と交換ではなく、みんなの好意からから 手に入れることができました。最後に、ハリネズミのおじいさんは、金貨を道端において帰りました。こころ温まるはなしです。わたしたちの生き方について考えさせられます。
人物たちのことばと行動から、ロシアの民衆の生活のことを思います。彼らは、このようにして、厳しい現実を乗り越えてきたのでしょうか。「あとがき」の田中潔さんによると、「100ルーブルより100人の友を持て」ということわざが ロシアにはあるそうです。お金より、人々のつながりを大切にした言葉です。
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※『ハリネズミと金貨』 ウラジミール・オルロフ原作、田中潔文、ヴァレンチン・オリシヴァング絵、偕成社 2003年 (2024/10/25)