
父と娘の物語です。
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ダニエルは、絵を 描くことがすきな おんなのこです。
彼女の描く絵は
おどる コウノトリ
おしゃれをした キツネ
空とぶ カエル
シルクハットをかぶった 鳥 ……
空想の翼をひろげ、心にうかぶままを 絵に描いていました。
写真家の おとうさんには、
ダニエルの絵が 理解できませんでした。
「目に見えるとおりに かけないなら、
写真に したほうがいい」
おとうさんは、写真を売って 暮らしを たてていました。
ある日、
おとうさんが 病気に なりました。
「あたらしい写真を とりにいこう」
ダニエルは、道具を 担いで、
雪の 降る街へ 出かけました。
でも、写真を うまくとれません。

「あなた 写真屋さんの おじょうさんじゃない」
「はい、そうです」
「わたしは 画家のカミーユ・ブトン、ときどき おとうさんの
写真を買っているの・・・うちに おはいりなさいな」
「絵をかくところを 見てもいいですか?」
「いいですとも」
そこにあったのは・・・
ゆめじゃないかしら!
わたしの絵とそっくり!
ブトンさんは、助手になることを 提案します。
「あした、朝早く きてちようだい」
「はい」
家で、おとうさんに、今日の出来事を ぜんぶ話しました。
おとうさんは、つぶやきました。
「この子はこの子で、じぶんの道を 見つけたんだな」
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服装、街の風景、写真機など、19世紀のヨーロッパの街を思いおこさせます。
自分のしたいこと、自分の道を見つけたダニエル。おとうさんは、彼女のすすむべき道をうけいれました。絵本の献辞に「父と母に」とあるように、ダニエルは、作者のバーバラ・マクリントックの分身といえます。舞台は19世紀ですが、ある意味、自伝的な絵本だといえます。
ダニエルの才能を認めた理解者、画家・カミーユ・ブトンの存在も、彼女の人生に欠かせない人物です。また、マクリントックには、『ないしょのおともだち』『ないしょのかくれんぼ』の絵本もあります。
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※『ダニエルのふしぎな絵』 バーバラ・マクリントック作 福本友美子訳 ほるぷ出版 2005年 (2025/1/18)