ふるはしかずおの絵本ブログ3

『スティーヴィーのこいぬ』- 「キューちゃんだ」

この日は、スティーヴィーにとって、思い出に残る日になったことでしょう。

    

       

ある朝

スティーヴィーは、

庭で こいぬを 見つけました

   

 ちっちゃな 泥だらけの こいぬです

   

 「このこいぬは どこかのおうちのこに ちがいないわ」

  と、おかあさんが いいました

 「ドコカノオウチのこ、だって。へんな なまえ!」

  

     

おとうさんは 

ブラシで 泥を おとしてくれました

こいぬの ただしい 抱き方を おしえてくれました

   

 ピチャ ピチャ ピチャ

 こいぬは、ミルクを 

 さいごの 一てきまで なめてしまいました

   

 「あのいぬ、うちで かいたいなあ」

 「まず、かいぬしを さがすのが さきだよ」

    

     

おとうさんは 「迷い犬」のことを

新聞に のせてもらうことに しました。

そして、

こいぬを つれて 通りの先までいってごらん、と言いました。

       

    

スティーヴィーは、

シンディー、ふたごの ピーターとポール、キャシー、デイヴィッドに

だれの こいぬか、きいてみましたが

誰も知りません

    

ちっちゃな ボビーが

うちの うらのおうちで こいぬが うまれたよ」と いいました

でも、ボビーは、まだ ちいさいので、

なにも わからないのだ、みんな 思いました。

   

   

家に かえると、ミッチェルさんが いました

おとうさんは、ミッチェルさんと はなすために

家のなかに はいりました

みんなは、玄関の前に すわっていました

     

    

ドアが あきました

おとうさんが こいぬを だいています

   

 「ミッチェルさんは こいぬのもらいてを

 さがしておられたんだよ

 おとうさんは、こいぬを だいじに 

 めんどうを みますといったんだよ」

   

 「そのとおり、このこいぬは、きみのものに していいよ

      

 「ほんとうに ぼくのものに していいの」

 「いいですよ」

          

       

みんなで こいぬの名前を 考えました

こいぬが、「キュウ、キュウ!」って なくので 

キューちゃんだ」と、スティーヴィーは 言いました

「キュウ、キュウ!」と、キューちゃんは 言いました

   

  「ほらね このこ、もう げいとうを ひとつ おぼえたよ

    

               ・・・

こいぬの「キューちゃん」と出会ったこの日をスティーヴィーは一生忘れないことでしょう。スティーヴィーは、とても健気にこいぬのお世話をしています。そして、さいごは、だれもが望んだ結末になりました。原題は、Somebody’s Pup(だれかの子犬)ですが、日本版のタイトルように、「スティーヴィーのこいぬ」になりました。

     

おとうさんは、スティーヴィーをやさしくみちびいています。大人の読者はおとうさんに共感することでしょう。

   

この作品のアメリカでの初版は1961年です。また、ふたりの作品に、子どもの愛着物を描いた『ベンジーのもうふ』があります。どちらも、子どもたちをやさしく見守る絵本です。

    

       ・・・

※『スティーヴィーのこいぬ』 マイラ・ベリー・ブラウン文、ドロシー・マリノ絵 間崎ルリ子訳、あすなろ書房 2011年  (2025/6/15)

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