シェイカー通りの人たちの 日常生活が、淡々と語られます。
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そう遠くない 昔
シェイカー通りという ところが ありました。
いまは、石ころが ころがっているだけで
なにも 残っていません。
そこに、長年 住んでいた
年をとった ハーキマー姉妹は、
生活のために 通りの両側の農地を すこしずつ 売りました。
シェイカー通りに
家が 建ちはじめました。
最初の家は
ヴァージル・オーツと 妻のスー・アンと 5人の子ども
アンの兄、ウェイン。
お隣は、サム・クリークが 住みました。
道の 反対側には、
ローズ一家と どうぶつたち。
シェイカー通りの住人たちは、
気ままな 人たちでした。
ヴァン・スループじいさんの家には 犬が 集まってきます。
隣りは、ジェスとベンの 双子のウィップル兄弟です。
その後ろは、ピーチ一家の 家でした。
ヴァン・ダー・ルーンは なんでも できました。
井戸をほり、納屋を移動し、塀をつくりました。
薪をつくり、みんなに わけました。
ルーンの一族は 4つの家に 住んでいました。
ある日、ベン・ウィップルが 言いました。
ぼくたちみんな、おいだされちゃうんですよ。
ボシーズ池に ダムが できるらしいです
それは 本当のことでした。
ヴァージル・オーツが、最初に 引っ越しました。
「泳げないんだ」という言葉を のこして。
ウィップル兄弟
ピーチ一家が 去り、
ひとり また、ひとりと
去りました。
ダムが できました。
家々は 水の下に 沈みました。
シェイカー通りは、貯水池通りと 名前をかえました。
ヴァン・スループじいさんだけは、まだここに 住んでいます。
ボートの上で 暮らしています。
犬たちも、あいかわらず つぎつぎにやって来ます。
「水も いいもんだよ」
ヴァン・スループじいさんは、そう言うのです。
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シェイカー通りで暮らしている、ひとり、ひとりの名前が紹介されます。貧しい生活ですが、平和な日常生活を営むシェイカー通りの人たち。でも、ダムが建設され、町が水没することを知らされると、人びとは、ひとり、またひとりと町を去っていきました。残ったのは、ボートで暮らす、ヴァン・スループじいさんだけという話です。
シェイカー通りの人たちは、どのような人生を送って、ここに来たのでしょうか。子ども向きの絵本とは言えませんが、人物たちの人生を垣間見る、短編小説のような味わいがあります。
アリス&マーチン・ブロベンセンは、『栄光への大飛行』で1984年のコールデコット賞を受賞した、アメリカの著名な絵本作家の夫婦です。
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※『シェイカー通りの人びと』 アリス&マーチン・ブロベンセン作、江國香織訳、ほるぷ出版 1999年 (2024/8/5)