ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ガラスのなかのくじら』- 「うみって なあに?」」

大きな水槽に住む くじらの ウェンズデー

ウェンズデーは、海を しりませんでした。

     

    

ある日

ウェンズデーは

水槽のなかで、おおきく ジャンプしました

すると

とおくに 青いものが 見えました

     

ジャンプするたびに

ブルーは やっぱり あそこに あります

 

     

ある朝

おんなのこ(パイパー)が やってきました

ウェンズデーは、彼女の目の なかに

ブルーを 見ました

瞳に ウェンズデーが うつっています

パイパーは いいました

    

 「あなたの ほんとのおうちは、ここではないわ・・・

  あなたの ほんとのおうちは うみよ!

  

 「うみ・・・?

  うみって なあに?

    

 海のことが わからない ウェンズデー

 なやみ 眠れなくなった ウェンズデー

   

 

ウェンズデーは

「うみ」のことを 忘れることにしました

すると

あのブルーのことを 思いだしました

そして、もういちど 見たくなりました

  

   

ウェンズデーは、思いきって とびました

水槽が ひっくり かえり

水が あふれ

ウェンズデーは ぐんぐん 流されていきます

  

    

たどりついたのは・・・

    

あの ブルー

    

   

ウェンズデーは、

およいで、

もぐって、

くるっとまわって、

ちゅうがえり

       

 うまれてはじめて 歌をうたいました

 ブルーのうた

 せかいの歌

 パイパーの歌を

     

ウェンズデーは とうとう たどりつきました

ほんとうの居場所、海に

  

           ・・・

くじらのウェンズデーは、安全で、食べ物もある、水槽に飼われています。ウェンズデーがジャンプをするたびに、ほめてくれる人もいます。都会にも住んでいます。でも、動けるのは水槽の中だけ。ウェンズデーは、現代のわたしたちの存在の比喩でしょう。ウェンズデーが、行動して「うみ」を見つけたように、本当の居場所を見つけるために、わたしたちも飛んでみなさいと言っています。

  

ウェンズデーにとって、今とは違うところに本来の場所、海がありました。彼の行動力はすばらしいと思いますが、わたしたちは、まず私たちの住む所をよく知らなければなりません。

       

       ・・・

※『ガラスのなかのくじら』 トロイ・ハウエル&リチャード・ジョーンズ 椎名かおる訳、あすなろ書房 2018年  (2025/5/27)

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