
アフリカ南部の むかしばなしです。
ずっと むかしの 世界が 若かったころの はなし。
ある年
雨が まったく ふらなく なりました。
大地は かちかち
川も ぬかるみが のこるだけでした。
あるばん、
カメは おいしそうな 実がなっている
むおおきな うつくしい 木の夢を 見ました。
おばあさんが、「その木は ほんとうに あるのよ」と教えてくれました。
「でもね、実を もらいたかったら
木の なまえを いって
あいさつをしなければ ならないの」
「おしえてください」
「オノモロンボンガ」
「オノモロンボンガですね」
カメは
「オノモロンボンガ オノモロンボンガ」と つぶやきながら、
まほうの木を 探しに いきました。
ライオン
ゾウ
ガゼルは、
自分の方が その役目に ふさわしいと言いますが、
木の名前を すぐに わすれて しまいました。
「オノモロンボンガ オノモロンボンガ」
カメは つぶやきながら、
ようやく まほうの木まで たどりつきました。
いろいろな種類の 実が たわわに みのっています。
カメは おおきく 息をして、
まほうの木に むかって 声をあげました。
「こんにちは オノモロンボンガ! オノモロンボンガ!」
どうぶつたちも 声を あわせて 言いました。
「オノモロンボンガ!」
「オノモロンボンガ!」

まほうの木は
実を ぐくーっと 下まで おろしてくれました。
バナナ、マンゴー、ナツメ、パパイヤ、ココナツ、オレンジ、ナツメヤシ、パスナップルが 実って いました。
種から、やがて いろいろな果物が そだっていったのです。
・・・
魔法の木の名前は、「オノモロンボンガ」。とても言いにくく、覚えずらい言葉です。
ライオンはアリ塚にぶつかり、ゾウは大きな木にぶつかり、ガゼルはぬかるにで転ぶと、その言葉をすっかり忘れてしまいました。オノモロボ、オボロノモ、オノモム、ボンゴモンゴ、オンボモンポだったっけ? と言っています(笑)。
絵本の語り手も、これらの名前を言うことに苦労することでしょう。でも、ユーモアがあります。読んであげるのがたのしい絵本となるでしょう。
・・・
※『オノモロンボンガ』 アルベナ・イヴァノヴィッチ=レア再話、二コラ・トレ―ヴ絵、さくまゆみこ訳 光村教育図書 2021年 (2025/3/22)