
わたしは マディ。
字を よむのが だいっきらいな 女の子です。
字が たくさん あるから
本も 雑誌も きらい。
なにより きらいなのは、国語の時間
言葉が うまく でてこないの。
つっかえたりすると、みんなが クスクス わらうの。
だから、わたし・・・
だんだん がんばれなく なってしまうのよ。
先生が わたしに くれるのは
「がんばりましょう」の ハートのシールばかり。
わたしが ほしいのは
本を よめたとき もらえる
星のシール。
土曜日
ママは わたしを 図書館に つれだした。
図書館の テンプルさんが いった。
「きょうは とくべつなことが あるの
きっと あなたも たのしめると おもうのよ」
奥の部屋を あけると、たくさんの犬が いた。
「マディ! よかったら このへやの わんちゃんに
本を よんであげて くれないかしら?」
「この子は ボニー・・・おはなしを きくのが
とーっても だいすきなのよ」
「うん」
ドキドキする
どうしょう
声が うまく でてこない
ボニーを みると・・・
わたしの 目を まっすぐ じっと しずかに
みつめかえすだけだった
ボニーは、くすくす わらったりしない
すこし きもちが らくになった
よし。もう1かい、やってみるわ!

それからの 土曜日
わたしは 図書館で ボニーに 本を よんであげることになった。
ふしぎね、
まちがえることを きにしなくてもいいのなら
本を よむことって とっても たのしい。
学校で 星のシールを もらった わたし
ボニーに あげようと 図書館に いくと
ボニーは、あかちゃんを うんでいました
「さあ、マディ! こんどは ボニーと あかちゃんたちに
本を よんであげて くれるかしら?」
・・・
わたし(マディ)の一人称視点ですので、彼女の心のなかが手に取るようにわかります。一人称視点は「わたし」の変化を読むのがコツですが、この絵本の場合、本を読むことがだいきらいなマディから、「本を よむことって とっても たのしい」マディへと変わります。マディは、自己肯定感がたかめ、読むことに自信をつけました。
その手助けをしてくれたのが、ボニーという犬でした。ボニーは、マディが読むのを間違えても笑いません。評価もしません。マディが本を読むのを静かにじっと待っていてくれます。訓練をうけた「読書犬」だからこそできることかもしれませんが、ボニーの態度から教えられるものがあります。
・・・
※『わたしのそばできいていて』 リサ・パップ作、菊田まりこ訳 WAVE出版 2016年
【追記】
「読書犬活動」について調べてみました。「読書を通じたこどもとワンちゃんとの交流のスタートは1999(平成11)年にアメリカ・ユタ州の図書館で行われたプログラム「R.E.A.D.」(Reading Education Assistance Dogs)に遡ります。今日では世界各国で読書犬が見られます」(神戸新聞NEXT)。日本の図書館でも取り組まれはじめています。 (2025/4/1)