わたしの目を通して語られる、家族の歴史と黒人差別の歴史です。
むすめに語りかけます。
・・・
わたしは、
いま、小児科医。
でも、小学校の頃、
クラスには、茶色い肌の子どもは、わたしひとりしかいなかった。
奴隷制について 勉強したとき、
みんなが 見ている気が したものよ。
消えてしまいたい、と思ったわね。
わたしの 母さんの
おばあちゃんの おばあちゃんは、
奴隷として うまれたんですって。
だから、学校で勉強できるのは、
ありがたいことなのよね。
でもね・・・
かあさんの おばあちゃんは
自由人として うまれたけど、
学校へは 3年生までしか 行けなかったそうなの。
わたしの 母さんは、
アメリカの南部で そだったの。
学校の外にでると、「白人専用」ということばが、あちこちに 書いてあった。
看護師に なりたかったけど、
そのための 学校には 行けなかった。
だから、学校で勉強できるのは、
ありがたいことなのよね。
わたしは、科学を学ぶのが すきだった。
それで、
お医者さんになったの。
あなたも
奴隷の歴史や 公民権運動のはなしを きくとき、
姿をかくしたり、消えてしまいたい、と思ったりしないで。
あなたは、
勇気、たくましさ、知性、創造する力を もってるの。
だから・・・
空高く
はばたいてほしいの。
だって・・・
だいじなのは、ほかの人に どう見えるか、じゃなくて
鏡にうつった、自分に「なにが見える?」って
問いかけて みることだから。
のぞめば、なんにでもなれる
そんな自分のすがたが
あなたにも 見えていると いいな。
・・・
「だから、学校で勉強できるのは/ありがたいこととなのよね」がくりかえされます。表面的には、学校で学ぶことができるありがたさを語っていますが、学校の学びのなかにも、偏見や差別の温床があると言っているように聞こえます。でも、私は娘に向かって言います。自分を見つめること、あなたの可能性を信じ、進むべき道を見つけなさいと。
アメリカの黒人差別が、まだ根強く残っている現実をあらためて教えられました。
・・・
※『わたしとあなたのものがたり』 アドリア・シオドア文、エリン・K・ロビンソン絵、さくまゆみこ訳 光村教育図書 2022年 (2024/11/22)