絵本の語り手(「わたし」)は、
ノコギリクワガタの めすです。
めすの「わたし」の目から、クワガタの生活を 語ります。
・・・
私たちが住んでいるのは、クヌギやコナラの 雑木林です。
夜
樹液のでている クヌギの木に とんでいきます。
ちゅるちゅると 樹液を すいます。
「おいしい!」
木は かみきりむしなどに 傷つけられたとき、
汁をだして その傷を 治そうとします。
それが 樹液です。
樹液の 出ている ところには
かぶとむし
蛾
かみきりむしたちが
あつまってきます。
樹液のまわりは 夜も昼も おおにぎわい。
場所の取り合いで たたかいも あります。
わたしたち めすは、あまり たたかいはしません。
「あっ、くわがたの おすが
ふくろうに つかまった」
樹液の でている ところは、
めすと おすが であう場所でもあります。
わたしも ここで おすと 出会いました。
わたしは けっこんして たまごを産みます。
枯れ木を 見つけ、
あごで 穴をあけ、
その中に ひとつずつ たまごを 産んでいきます。
20から30こ。
たまごから
幼虫がうまれ、
1,2年間 木の中ですごし 成虫になります。
くわがたのこと わかってくれた?
わたしたち めすのことも おぼえておいてね!
・・・
ノコギリクワガタのメスを「わたし」という語り手にして、お話仕立てにしたユニークな絵本です。立派な角をもつオスのクワガタは、子どもに人気の昆虫です。オスに比べ、メスのクワガタは子どもたちに、あまり人気がないかもしれません。しかし、オスとメスがいて、クワガタの命がつながります。だから、「わたしたち めすのことも おぼえておいてね!」
また、「わたしたち めすは、あまり たたかいはしません」とか、卵を ひとつひとつ枯れ木にうみつけるなど、今まで知らなかった事実がありました。姉妹編に『ぼく、だんごむし』(福音館書店 2005年)があります。夏にむけて、昆虫がすきな子どもたちにおすすめの絵本です。
・・・
※『わたし、くわがた』 得田之久文、むたかはしきよし絵、福音館書店 2011年 (2024/7/2)